空にはうろこ雲、稲刈りの一家は総出のはずむ声。広島市郊外・長楽寺でアストラムラインを降りると広がる山里の風景にこころがなごみます。小川にはミゾハギ、ナツメの実も熟れて落ち、秋の草花に気をとられていると、スカートにいっぱい草の実が・・・。はじめて広島での展示会は、東京在住、廿日市生まれのジュエリーデザイナータナベジュンコさんのご紹介。ギャラリー・瓢箪堂は、高台にあるご近所さんとはひとあじちがう雰囲気。小さな森の中ともよびたいほど。オーナーの森末さんは小柄でとってもおしゃれ。築20年、自然としっくりとけ合った暮らしの中でギャラリーなんて夢のようです。12日午後遅く到着したとき、アンジュのニットはすでに森末さんと田部さんによってデイスプレイされていて、思ったとうりス・テ・キ!すこしだけ上から吊るしたり、壁に掛けたり展示会の飾り付けの仕上げを3人で楽しみました。
色づきはじめた木々のむこうから夕日が差し込みアンジュのニットたちに当たります。「ワー素敵!」思わず声がでて、初日を迎える準備が整いました。
日暮れどき繁華街の紙谷町から市電でトコトコゆられて宇品港へ。プリンスホテルの20階で夜の海を眺めながら和食会席。ずっと忙しくて張りつめていた気もちがゆっくりほぐれていくのがわかります。十三夜の月はホテルの水際までムーンリバーを描きさざ波をキラキラゆらします。
翌朝、大道り公園沿いのホテルから「アンデルセン」まで歩き、モーニング。広島の町も2回目ともなると、おおよその見当がついて親しみもわき、前回気づかなかった風景に目もとまります。
楽しみにしていたモーニングセットはピーナッツバターとバナナサンド。美味。焼きたて雑穀ブレッドのヘルシーさ。初日の朝はこのようにして始まり、ガラガラなアストラムラインで再びギャラリーへ。門を入った右手にある居心地のよい、ひと間と小さなキッチンだけの小舎で朝のお茶。広い窓から見えるのは庭の木々。わたしの理想の空間です。11時、お客さまがこられます。山口・周南市のSさん、宮島へ大阪から転居されたFさん。今回の広島展を待っていてくださいました。もちろん瓢箪堂のおなじみさんもこられます。驚いたのは、豊中と神戸から来られた仲良し二人組み。まさかの登場。うれしいことです。前日、鞆の浦などを観光され広島までの道中お二人の着ているセーターが大人気だったとのこと。デザインをした私にとっても光栄なことです。午後には広島市内のKさん。昨年5月「飛鳥」に乗船したとき、ニットのレッスンを受けられた方。再会に思い出がよみがえります。
40年来の友人、大阪・箕面のIさんも駆けつけてくれて、13日はしあわせに暮れてゆきました。
25日までの会期中、前橋・埼玉・和歌山などアンジュのお客さまたちが瓢箪堂ギャラリーへ伺う予定ときいています。一見の価値あるロケーションに、きっと喜ばれることでしょう。
わたしは14日からふたたび京都の展示会に向けて最後の追い込みです。一緒に作品を出展されるレッスンクラスのみなさんもあと一息。きっと素敵なニット展になることとおもいます。
28日からの京都展もどうぞよろしく。

アンジュ秋だより

石井麻子

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