コスモスは咲き木々の葉は色づき、秋となりました。「晩夏の旅」のつづきが書けぬまま熊本展に突入し、ここで勝手ながら「熊本物語」を先行させて、「キエフの旅」は後日ということでお許しください。

10月14日「のぞみ」で博多に向かいます。途中広島で田部さんが乗車、しかし京都から指定席を予約してしまったので自由席のタナベさんとは博多で落ち合います。向かいのホームの「さくら」に乗り換え熊本へ。早い早い、あっという間に着いた新装の熊本駅は何やらお揃いのジャンパー軍団。ボランテイアも右往左往。なんと「ねんりんピック」が開催されるのだとか。それでみなさんホテルが取れないと言ってたわけです。1時半頃、島田美術館着。約一年ぶりの再訪。静かな佇まいなのに、おしゃれで若さも漂う不思議な空間です。スタッフの方々にごあいさつして早速展示準備を開始。ハレパネをつなぎ合わせて三枚のタペストリーを完成させるのに約二時間。その間、麻の白いエプロンを格好良く着こなすオーナー夫人のユウコさんがてきぱきと白いギャラリーのしつらえをしてくださり、カメラの腕前もハンパでないアーテイストの力量を発揮。五時には終了、なんだかワクワクしてきます。タクシーで一週間借りることになる「ウイークリーマンション」へ。初めての体験。まあ広い!実際下の階には住人が居て、九階と十階がホテル形式なのですから居住できるスペースであり、ゆったりしたデザイナーズマンションの1LDKといったところでしょうか。熊本駅と熊本城が西と北の窓から見えるロケーションも気に入りました。上の階の田部さんとはスタイルの異なるインテリアを見がてら食事などで行き交い、美術館への通勤は一時間に一本の都市バス。乗れば10分の微妙な距離感を楽しみます。

熊本物語

15日 「秋のアート展」の初日を迎えます。門司のKさんはフオークロアのカーデ(上右)をお買い上げ。「いきいき」のご縁で京都のワンデーオープンに来られた方。DMに使われた森のジャケット(その左)も地元の方に。山口から来られた四人組みのにぎやかなこと、「いきいき」の読者さんは元気!げんき!滞在前半には大阪・堺のNさん、月一回福岡・直方から京都へ通ってられるNさんはお母さま同伴、京都のO先生はご夫妻で、と思いがけない出会いが嬉しいものです。どんぐりがポトン、コロコロと落ちてくるお庭の向こうにお蔵のギャラリー、そこで「茶碗展」を催しているYさんは近くの山中にアトリエがあるとかで、庭に張り出したテラスで大きな里芋をかごに入れて売っています。恒例とか毎日完売。16日のクローズ後、車でアトリエに案内してくれました。金峰山は夏目漱石の「草枕」の舞台になったり、宮本武蔵にゆかりの地とか。山上ちかくからは有明海が望め、うっすら夕日に海苔筏が幾何学的に美しい光景でした。そのYさんとユウコさんと四人で繰り出したのは繁華街にある「肥後路」。有明の海の幸と阿蘇の山の幸で盛り上がり、さすが地のひとのお薦めどころです。食後の散歩で、一見さんには気のつかない路地へと導かれ、閉店しているちいさな雰囲気のある本屋さんは「後日再訪」と胸に刻みます。シャワー通りのお洒落なブティックをのぞきながらモダンなギャラリーへ。もう電気は消えていたのにユウコさんの顔でドアーが開き、SHINOさんの「チェコビーズのアクセサリー展」に大興奮。それぞれお気に入りをゲット。さすが達人のご案内にはありがたく感激です。17日夕方、セカンドアシスタントの別所(B)が来てくれてバトンタッチ。一時京都へ戻ります。19日には東京クラスのアシスタントマサキとBは交代。21日に再度出かけて、すっかり島田美術館のみなさんと親しくなり、気分転換が効を奏しているマサキを見ていると、このような試みをして正解だと思えたのです。

会期も後半となり、赤丸も増えなんだか重量も軽くなったようです。野呂さんの糸は熊本でも手に入りにくいと、流れ編みのマフラーなどのレッスンも定着してしまい、アンジュらしい糸と色のハーモニーを肌で感じていただけたようです。22日には奈良のFご夫妻が九州の西北を旅してから訪れてくださいました。「木のけむり」でお茶をご一緒したり、クローズしたあと市電で辛島町まで行き、「チェコビーズ展」へ。もう作品は殆ど売れていて、残りわずかの中からFさんはお気に入りのブルー系を見つけてラッキー!やっぱりみんな好きなのですね。分かりにくい横町も迷わず行けて、本屋さんもOPEN中。Fさんと「欲しい本ばっかりね」と言いながら荷物を増やします。片隅に小ぶりのかわいい様々な趣の椅子が10脚ほど。朗読会かと思ったら大学の先生が来てお話会。熊本って文化度の高いところです。晩さんは「肥後路」へ。もうすっかりなじみの店といった風。23日、最終日。美術館を訪れていた同窓会のご一同さまは、帰り道に寄ってくださり、バスの時間も無いのにすっとご自分の好きなものへと突進して次々とお買い上げ。旧制の女子医専出身、80代とは思えぬ行動力と好奇心、身なりのお洒落度にも感服です。たくさんの方が来られましたが、日田からは数十年ぶりの従姉が義姉たちと・・。来てくれるだけで良いのにあれこれ選んでくれて嬉しい再会です。16時搬出準備開始。「二人は絶妙のコンビネーションね」とユウコさんから言われた成果が実りました。Yさんとユウコさんが私たちのラストの宿となる「グリーンピア南阿蘇」へ送りがてら、いっしょにお食事しましょうと車で出発。もうすっかり日が暮れたのに夜景を見ようと回り道してくれたり、満天の星を見上げたり楽しいドライブとなりました。グリーンピアでは先に到着していた山科在住のNさんと友人である熊本・鹿児島在住の三人組みは「先生!楽しくて、楽しくて先生のおかげです」と手を握られてしまいました。少女時代の仲よしさん、ニックネームで呼び合って本当に楽しそうでした。遠いのに行ってみようと思ってくださっただけでも、こちらこそ感謝なのに。

萩と藤袴がお出迎え 島田美術館

カフェ 木のけむり

ギャラリー B

箱根・やまぼうしさんからお花が・・

朝霧

阿蘇駅から外輪山

翌朝、眼下に朝霧がたなびき、澄んだ空気の中を散歩。逆光のススキ、真っ赤なうるしの葉、山の秋を堪能します。阿蘇下田から立野へ。豊肥本線に乗り換え、スイッチバックを体験して阿蘇駅で下車。丁度泊まった南阿蘇の反対側、雄大な阿蘇の山々と振り向けばなだらかな外輪山、秋晴れの非日常の景色に囲まれてのランチです。その後「九州横断特急」で大分へ。ソニックで小倉、新幹線で帰途に着きます。広島で降りる田部さん。私は一度京都へ戻ったけれど、淡々と会期中、在廊してくれたことに深くお礼を申し上げます。インドやグアムなどいつも旅しているからでしょうか、ちいさなことにはこだわらず、アーテイストとしても尊敬する方。また東京で逢いましょう、と言って別れました。熊本が大好きになった展示会。 お出かけくださったみなさま、ありがとうございました。またいつかお目にかかれますように。   

2011・10・29 asako

ギャラリー A

有明海の夕景

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