さて、ケルン滞在ラストの日。12時43分まで散策の時をすごします。ホテルにリュックを預かってもらい、身軽になって出発!歩いて5分足らずの大聖堂(なのに最初にさまよった夕暮れの長い時間・・)を、三たび訪れタペストリーのモチーフとなるステンドグラスを見上げます。そういえば、前日登った500段は多少の違和感をふくらはぎに感じつつも、筋肉痛の恐れなし。毎朝欠かさぬストレッチが効果を発揮しているようです。他にこれといって名案も浮かばず、ケルン名物といわれるチョコレートミュージアムにでも行ってみようかと、ライン河畔を目指しかけ、ふと帰りは川沿いの道をバスで駅まで戻るのならばすこし回り道をしよう。そう考えてローマ時代の遺跡発掘現場を見ながら歩いていると、白い馬に乗った中世の服装の騎士に遭遇。厩舎の大きなトラックも数台停まっていて、なにやら期待の予感。「何が始まるの?」「パレードさ」「何処で?」「ここじゃない」。簡単英語で了解。わあァたくさんいる・・。まだお正月休みなのか石畳の通りにはクローズしたおしゃれなお店が並んでいて、そちらのウインドーも気になるし、続々と集まってくる参加者も興味深く、わくわくしてきます。およそ1時間、広場に隊列が整う様子をカメラに収め、延々とつづく隊列を見送り、ライン河にダイレクトに向かわなかった幸運に感謝しました。1月4日、多分毎年恒例のヒストリカルな行事の一旦に出会えたのも、最後まで見届ける時間は無いものの、はるばる旅して来たことの意味を深めてくれました。そしてやっぱりオーデコロンの発祥地である証拠にコロンのミュージアムにも寄り、再びTHALYS号でパリに戻ります。帰りの列車に「タンタン」はいなくてすこし淋しい、でもランチは出て、お茶とデザートのサービスもあり、窓外に流れる牧草に囲まれた風景となる「小さな家」のあれこれをスケッチして過ごします。この秋はクッションではなくアカデミーの全員で「小さな家」を編む予定。そのモチーフとして形や屋根の色を参考にします。ゆるやかな草原には行きの車窓からも気になっていた「風力発電」の風車が点在し、それはフランス・ベルギー・ドイツの三国で均一に見ることが出来ました。わが国も早く原発に替わる電力の供給を望みます。

ケルンからパリ

15時59分パリ北駅着。大通りに出て、来た時と「反対のバス停から乗るのよ」と、里美さんから教えてもらっていたので迷うことなく30番に乗り、ピガールで下車。同じ広場にあるモンマルトルバス(小型のシャトルバス)で夕方の買い物や学校帰りのひとたちと坂道を揺られ、丘の上へ。もうそこは里美さんのアパルトマン前の小さなロータリー。暗証番号を押してドアを開け、管理人さんの住まいのある玄関ロビーで部屋のボタンを押すと「アロー?」「ただいま!」「お帰りなさい!」カチャッと中庭にでるガラスの扉が開きます。とっても優雅でパリ市の歴史的建造物に指定されているほどですから、パリ市内とは思えぬゆったりとした空間が広がり、もうひとつの棟をガラスの扉二枚でスルーして、おおきな庭園に向かって階段を数段降り、左手の奥まった棟にまた階段を下って入ります。モンマルトルの丘にあるので、その傾斜を利用。4階のベランダから里美さんが手を振っています。小さなエレベーターを降りると、すでに今夜のディナーとなるタジン料理の美味しそうな匂いがあふれていて、味気ないホテルでなく居心地の良いアパルトマンに戻れることに喜び、感謝します。

5日は一日パリ。わたしの望みどおりに里美さんが付き合ってくれる日。10時過ぎ、坂道を下りメトロのアベッセ駅へ。おなじみの(わたしにとっては毎回のことだから)セーブル・バビロン下車、大好きなデパート「ボンマルシェ」へ。手芸売り場は改装中だったけれど里美さんが店員さんに頼みこんで間近でボタンや毛糸を見せてもらえます。野呂さんの糸もあり、ボタンもデザインの美しいものばかり。良いものをみることができました。次のお目当ては靴下屋さん。「こっちの通りから行こう。」いつものサンジェルマン大通りから一本西の通りに入ったとたん、古色蒼然としたこげ茶色の木のドアを見て立ち止まり、ケルンで編みあげた「チェロのベスト」を取り出しドアノブに掛けてカシャ!今回はパリの街で撮影しようと、あれこれ持参。里美さんもクッションなど持ってくれているのです。みぞれの降る中、お店のウインドーを見たり撮影出来る場所を探したり・・。レンヌ通りの靴下屋でグレーパープルのような不思議色のタイツをゲット!里美さんのパリみやげはいつもここのもの。さあ、次は26番のバスでマレ地区へ。セーヌ河を渡り市役所脇を通り、サンポールを過ぎ里美さんのお薦めブテイックへ。デンマーク人のオーナーの店とか。そういえば藍色のワンピースなどお気に入りのドレスを幾つか着たり見せてもらっていました。材質も極上、デザインもカラーコーデイネイトも最高・・。素敵なお店へ連れてきてくれてありがとう。いつかまた来ましょう。そこからカトリーヌさんのお店へはVieille de Temmple 通りを一直線。風にあおられ15分。ア・ラ・ボンヌ・ルノメはいつも素敵なウインドーデイスプレイ。
ボンジュール カトリーヌ。年季の入ったフローリング、高い天井の広々とした店内にセンスの良い手仕事の作品が溢れています。2009年の秋に京都で逢って以来の再会。まずはランチ。近くの古いビストロへ案内してくれて、本日のランチは分厚いポークハムにあたたかいアップルソース添え。デザートの白いチーズケーキは大きいので三人でひとつ。一見さんでは入りにくい、椅子と椅子がくっつきそうなパリっ子たちの隠れ家のような小じんまりとした得難い雰囲気でした。店に戻ると共同経営者のエリザベートさんがいて20年ぶりのハグ。ふたりは角をまがったシシール通りで、もうすこし手狭なブチックをOPNEしてから35年。今年の7月にクローズします。はじめて地図を片手に訪ねた日、ふたりがまだ始めて間もない店の奥で仕事をしていた姿は忘れられないものです。そう感想を述べると、二人は同時に頷きました。カトリーヌさんはその後、猛烈なエネルギーで世界中を歩きまわり、とうとう重いほどの学術的にも評価される民族衣装の本を二冊出版(一冊は日本語訳も)、この秋には「世界の藍(仮題)」も刊行予定です。また、昨年暮れには「ア・ラ・ボンヌ・・」の35年をまとめた素晴らしい冊子も作り、その才能を存分に発揮しています。クリスマスプレゼントに贈られてきた店の歴史本の中に、一ページまるごとわたしから送った手紙の封筒が印刷されていて感激しました。いつも「アサコからの手紙は美しい」と、多分に切手の存在と思うけれど、そう言い続けてくれていたことが証明されたようです。もう最後の訪問となるお店に別れを告げ、カトリーヌさんには「またいつか」と挨拶して、里美さんとメトロでデファンスへ行き、乗り入れているRERでサンジェルマン・アン・レーに向かいます。
Saint-germain-en-rayeは二度ほど行ったことのあるパリ郊外の城下町。パリ在住40年になる里美さんは「この街初めて」なんて驚くけれど、何故わたしがニットの撮影場所に選んだのかを行ってみて納得してくれました。それは、パリほど建物の高さがなく、三、四階の低層。落ち着いたたたずまいの気品ある街だから。広場をまわり路地を抜け、強い風に飛ばされそうになりながら、それでもペンキの剥げた扉や塀にセーターを引っかけたり、クッションも後ろから支えてもらったり、「あなたのベストも撮ったら?」と言われ、コートを脱いで寒さに負けず撮影したり、お屋敷街や商店街を歩きまわって目的を果たし、駅前のカフェでお茶にしたときはほっとしました。気心の知れた友人と(異国ですからもちろん心強い相棒としても)、ひとときを楽しく過ごせたことは本当にありがたく、2012年のはじまりの良き思い出となりました。
エトワールで乗り換え、いつもと違うBRANCHE駅で下車し、里美さんの日々の買い物通りを歩きながら、「出来たばかりでまだ行ったことこと無いんだけど」と、入ったのは「カキ」の店。隣のレストランの料理場が表に出てきたとのこと。ワインと黒パンと殻を割ったばかりのカキと茹でたてのエビで満腹。、2011年、パリのバゲットnoTとなったというパン屋さん(選ばれると毎朝エリゼ宮へバケットを御用達)で明日のパンを買い、お腹がいっぱいだから歩いて帰ろうと、モンマルトルの丘をあちこちブチックをのぞいたあと、さすがに急な階段の連続には息が切れそうでしたが、パリの夜を眺める絶好のロケーションですから、登り切れば遠くにパチパチと煌めくエッフェル塔も見え、疲れもどこへやら。あたたかい里美さんのアパルトマンで原発のその後のはなしをしたり(行きの飛行機で読み終えた小出裕章先生の本を、わたしがケルンに出かけている間に読んでいて)、これから生まれる新作絵本について聞いたり、いつのまにか夜は更けてゆきました。

翌朝まだ暗い6時30分頃に起きて朝食。8時過ぎ、このところ知り合ったというアフリカンのタクシーを呼んでくれて「また、元気でね」と見送られ、しらじらと明けて行くパリの街と別れてシャルル・ド・ゴール空港へと向かいました。短かったけれど充実の一週間。今年も頑張れそうです。よろしく。


・・・・・・asako 2012・1・30

ケルン旧市街

1月4日のパレード

左のウインドーはデンマーク人のお店 パリ・マレ地区

ア・ラ・ボンヌ・ルノメ

お店の歴史を描いた本

パリでくつろぐ仔ネコ

エリザベート・アサコ・カトリーヌ・サトミ
  全員 60代半ばの元気な女子力

サンジェルマン・アン・レーの街並み

街並みのクッション

チェロのベスト

アンチックショップ

馬上の騎士

建造年が
異なる各階

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