10月半ばにやって来た台風に秋雨前線が刺激されて雨模様の日々がつづく中、箱根の「やまぼうし」さんで展示会が催されました。その準備や18日から24日まで箱根に滞在していて、旅のつづきを書くことができませんでした。申し訳ありません。雨のあと急に寒くなって、あのイタリアとオランダの晩夏の旅が遠い出来ごとのようです。ではフィレンツェのつづきから再開いたしましょう。

翌日はバスで40分のシエナへ行きました。パリ在住の里美さんは最初にイタリアに住んでいて、その後パリへ移ったのですが、パリからも良くイタリアへ旅をして「シエナが一番」と聞かされていました。アパルトマンの壁にはシエナの田園風景が描かれた絵が二枚も掛っていて、どちらもパッチワークのような畑がうねる丘の絵でした。きっと花の季節には郊外で「絵のような光景」が広がっているのでしょう。高速道路を下りると、何やら城跡のような壁面がつづく通りに市が立ちにぎわっています。終点の広場で降りてまずは「カンポ広場」へ。旧市街の石畳は細い坂道でショッピングストリート。壁には馬をとめていた鉄の輪っかがまるで装飾のように取り付けられています。馬の産地だったのでしょうか、市役所を見下ろすカンポ広場は楕円形で、毎年8月16日に各地区代表による競馬が催されるとのこと。大群衆と馬のリズミカルで力強いひずめの音が聞こえてくるような気がしました。まるで砂糖菓子のような大聖堂を見上げ、街をぐるっと回ると、いつのまにかバスから見ていたマルシェ。延々とつづくテント、人の波。日曜でもないのに混雑に驚きながら旧市街へ戻ります。里美さんの描いた風景を見たいし、キャンティというワインの名産地でランチを取ろうと思い、タクシーの運転手さんに交渉。1時間のランチ待ちで往復割引までしてくれて交渉成立! 30分のドライブは丘の上にシャトーが見えてワイナリーらしく街道筋から並木道が丘の上の館に至る美しい光景です。
里美さんの絵のように葡萄畑がうねっています。キャンティーは三つの村があり、一番シエナ寄りのガイヨール村で目にとまったトラットリアへ。運転手さんもお薦めですって。「では1時間」と約束すると車を大きな木の陰に寄せて、多分シェスタ(昼寝)でしょう。ハンギングバスケットにゼラニュームなどが咲いているテラスで陽気なオーナーによれば「今日はピッツアがない、夜だけ」とのこと。問題ありません。だって珍しいメニューがいっぱいですもの。私はアーテイチョークのサラダ。大塚夫妻も生ハムやサラミの盛り合わせハチミツ添え。さすがにワインも美味しくてしあわせ・・。のどかなキャンティーの村の昼下がり、運転手さんもシェスタのあとさっぱりとした様子で帰り途をドライブ。しかしバスステーションを鉄道の駅と間違えたようで、フィレンツェへは列車で帰ることとなり、それもまた良しと我らのくったくのなさ加減。何時に動き出すのか判らないイタリア時間ですから、列車のシートがブルーなのでベストやバッグなどの撮影タイムとなりました。フィレンツェへ戻り駅の近くだからと再び大聖堂に行ってみます。行列は昨日ほどではなくこれなら並ぼうということになり、前に並ぶひとたちが72時間のフィレンツェカードを出してどこかへ。チケットと交換をしてきたようです。「エクスキューズミー?」と尋ね、7番地の表示のあるティケット売り場へ走ります。昨日もきっと整理の方は「あっちで交換しておいで」と言ったのですね。入口まで行ってからもう一度並び直さずすんで良かった。まわりの状況はいつも把握していなければと合点です。
街のどこからみても印象的な丸いドームはフレスコ画が圧巻です。行列にひるんでスルーしなくて幸いでした。ドゥオーモを見学してほっとしたのでジェラートでもたべようかと、デパートの屋上テラスにいくと、日本語の上手なウエーターがいて、全くどこもかしこも日本人なわけです。広場では仮面を付けたふたりの女の子がバレーのスタイルで路上パフオーマンス。チップを入れると腰を振りながらポーズを替えてくれるし、男のひとは美女を両手に大満足でパチリと写真を撮ってもらっています。複雑なバス路線もO先生には苦もなくホテルの近くまで乗車できてシエナへの半日旅行も無事終わり、この夜もホテル向かいの「アルマンド」でディナー。二日つづけて行きたいほどの小さなレストランでした。  つづく

魅せられた旅 U

シエナの街で

カンポ広場

シエナ大聖堂
白・黒・ピンクの大理石が
美しいゴシック様式

街のシンボル ガチョウのフラッグ

生ハムの盛り合わせと
手前はアーティチョークのサラダ

フィレンツェの大聖堂

広場のパフォーマンス

ガイヨール村のトラットリア

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