ドレスデン中央駅

プラハをあとに西北をひた走り、添乗員のU氏は2二日間ご一緒したプラハのガイドさんに負けるものかと、珍しくマイクを握り、大学時代にゼミの仲間と3人でプラハ・ブタペストの旅をしたときのドラマチックな話をしてくれました。まだ冷戦中でしたからビザが必要で、ブダペストへ行くべく中央駅でU氏だけ用紙を紛失、ハラハラ・ドキドキの結末は何とかくぐり抜け、数日後ブタペストに行かずウイーンへ向かい、友人たちと再会できたというものでした。そのときの経験が、以後思いがけなく今の仕事に就いたことで役立っているそうです。初めて伺うものでしたけれど、いささかおちょこちょいの憎めない人柄に、結構真面目で底力のあることが分かりました。
そろそろ国境かと思うころパトカーが先回りしてSTOP!チェコもEUだからノンストプのはずなのに?と訝っていると、女性警官が乗車して車内をぐるっと見回しながらニッコリ笑って立ち去りました。あちこちで不穏な事件があるのですから、シェンゲン協定でパスポートコントロールの無くなった国境では、あるべき監視かもしれません。「ここからドイツ」と、小さな看板をライナーさんが示してくれて、いよいよアウトバーンに入ります。昔から名だたる超高速道路ですから、のんびりした観光バスなど、ビューッと追い抜いて早いこと・・。高速を下りて≪料金所などありません≫街を周回し11時半ごろ、かってザクセン王国の首都・ドレスデン市内着。
現地のガイドさんに案内されて待望の「ヨーロッパのテラス」へ到着。ゲーテも愛したという散歩道ですから期待に胸はずませてたどり着いてみると、あらっ?エルベ川が流れ、蒸気船のポーッという音が聞こえてはいるけれど、想定内の川べりで少しがっくりしました。しかし、旧市街側に立ち、向こう岸の歴史ある建物を眺め、旧式のトラムがのどかに右手のカローラ橋を行き交う光景は、絵画の一場面にも見えて、昔から得難いものだったのだろうと納得したのです。ゲーテの時代にはもちろんトラム(市電)は無いし、橋もあったか否か?ですけれど。、

今回は、京都とプラハの姉妹都市提携20周年記念の行事に参加することがメインの旅でしたが、プラハ以外にどこへ行きたいかと考えたとき、まずは隣国のドイツを思い、ベルリンが第一候補でした。そしてアンジュのみなさんと出かけるならば、ヘルシンキもご案内したいと、航空会社はフィンランドエアーと決め、あとはそれぞれの街から(プラハからテルチへ行ったように)夢を膨らませれば良かったのです。プラハからベルリンはバス旅としました。昨年、サンモリッツからチュ-リッヒへの移動を列車にして、高原を行く車窓に感動したのですが、乗り換えで重いバゲージを引きずりながらバタバタしたことを考慮してバスで移動。直行しても良かったけれど、途中の街にも寄りたいものです。地図を眺めているうちに、ランチをドレスデンで、ティータイムはライプツッヒに決定!両都市とも旧東ドイツであり、ドレスデンは第二次世界大戦で壊滅的に破壊され、その後、奇跡の復興を遂げ、ライプツッヒは音楽に縁の深い街として有名です。ドライバーはテルチにも連れて行ってくれたライナーさん。奥さまは日本の方とか、とっても優しく添乗員のU氏いわく「彼はプロ」とのこと。近頃は他国の方も多く、なかなか思うようにドライブしてくれないドライバーが多いそうです。クリームで固めたカイゼル髭も可愛くて、あと2か月で定年というのが惜しいではありませんか。

マルクト広場の
     フラウエン教会

テラスを背にして旧市街とフラウエン教会を望む
ガイドさんの超目立った赤い傘!

アウグストス橋から旧市街へと走る
市民たち

午後2時、再びアウトバーンに乗り、満腹で眠気にも襲われるけれど、あちこちに三枚羽の風力発電が見えて来ます。さすがドイツと思っていたのですが、ライプツッヒに近づくころ空が雲って雨の気配がしてきました。そして遠くにまるで竜巻かと思うほどの一筋が立ち昇るのが、原発の1基からの煙だったのです。まだ脱原発への過程?でしょうか。ライプツッヒ郊外の川辺リに意外な光景でした。
市内に入ると緑が目立ちます。広々とした公園では日曜日のマーケットが開かれているようで、バスから下りて駆けつけたいほどですが、ここでの目的は「バッハミュージアム」ですから我慢して、現地のガイドさんとの約束である3時半にJUST ON TIME!
バッハの良き協力者であったゲオルク氏の店舗兼住居が美術館として開放されているのです。思わずカメラを向けたのは庭に咲くバラたち。お屋敷の裏庭がばら園とは想像もしていなく、大好きなバッハが眠りについた地で(墓所はトーマス教会)花に囲まれていることが嬉しく思えました。自筆の楽譜や5線を引くロールスタンプのようなもの、また日本とは逆に大きな樹が枝分かれする家系図など、古楽器と共に興味深い展示でした。
さて、お約束のティ-タイムは・・と思案するまでもなく、ミュージアムの1Fにあるカフェに決定!ケーキも美味しく、バッハが聖歌隊の指揮をしたトーマス教会を見上げながらのひとときとなりました。音楽留学をしているかと思われる現地の若いガイドさんとは束の間でしたが、手を振ってお別れし、ライプツッヒをあとにして、いよいよベルリンへ向けてアウトバーンをひた走りました。つづく

2016・7・9 asako

ヨーロッパのバルコニーとも呼ばれるエルベ河岸

初夏のアンジュツアー

ドイツ Ⅰ 
ドレスデンとライプツッヒ

テラスを下りて広場に向かうとフラウエン教会がそびえています。まるでパッチワークのような不思議な建造物は、過去の大戦で崩れ落ちたままにされていたものを、東西統一後に資金が集まり修復された・・とのこと。愚かな歴史を忘れぬためとはいえ、良く瓦礫の山が残されていたことだと感心し、また以前のようにあるべき場所にはめ込んだ建築的パワーに畏敬の念を持ちました。古い砂岩は黒ずみ、新しい砂岩はまだ明るい色調であるのが、時の長さを切ないものに感じさせてくれます。オペラ座へ向かう道の左手にはシックな色合いの壁画!端が見えぬほど長いもの・・。アウグストⅡ世の凱旋行進図にはマイセンの陶器が28.000枚!!素晴らしいアートが破壊されず残っていたことに感激です。
宮殿近くのオペラ座へ行きたいけれど、日曜日のこの日は市民マラソンが行われているらしく、参加者がエルベ川を渡って近くにあるらしいゴールへ駆け込むところです。いつまで待っても横切れそうにないので断念し、ガイドさんが走って予約してくれた教会のあるマルクト広場に面したレストランへ向かいます。歩道に張り出したテーブルも満席のレストランは、きっと美味しいのだと予感出来ますね。
案内されると、なんとレストランの奥まったところが吹き抜けになっていてトラムが一両あると思っていると、そこがアンジュご一行の予約席でした。店内の一隅に何やら綺麗な花のカードが置かれています。立ち止まるとテーブルで絵を描く初老の婦人がいらして、全てその方の手描きなのです。思わず数枚選んで求めました。日本では見かけない、アーティストと共存のさり気ない雰囲気に拍手です。元気の良い方はビールを頼み、ワイワイとにぎやかで美味しいランチとなりました。

マイセンタイルの壁画

レストラン内のトラムの中にテーブル席が・・

ライプツッヒの市内に入ります

石畳にラブリーなペイント

歩道で応援

無数の風力発電