2016 夏日記 Ⅰ
7月に入ればコンチキチン!祇園祭のお囃子がどこからか流れてきます。15日(金・宵々山)プラハの旅の打ち上げ会を四条川端の「キエフ」屋上で・・。その前に京都検定1級O先生のガイドで希望者6人が引率されてまだ明るい鉾町を歩きます。四条烏丸を上がったところにある「井戸」の由来、室町通りへ抜けながら占出山の胴掛け鑑賞や、四条通りに並ぶ鉾の説明。厄除けの長い竿の先端近くにあるサカキの設え方の違いには初めて気づかされました。長刀鉾のお囃子も間近で聞き惚れ、お稚児さんが注連縄を切る御幸町の南北角には、もう笹竹の準備が整い、塩が盛られいて普段歩いているときには気づかぬ小さな祇園祭りの隠れ処に感激です。参加者から「知らなかったことばかり、毎年やってください」と、O先生はリクエストもされていました。その後レストラン・キエフの屋上で風に吹かれながら、久しぶりの日通・U氏も加わって、四条大橋を行き交う人並みや鴨川の床を見下ろしながら盛り上がったのです。

花笠巡行 東山四条 石段下あたり

24日(日)、この日は後祭りの「花笠巡行」。数年前にバスの中から眺めて、可愛く華やかな行列に見とれたことがずっと心に残っていて、休日なのでカメラを持って八坂神社の石段に座り、プロ・アマ大勢のカメラマンと共に、四条通りを西の方から戻って来る一行を待ちます。身近で観ると印象も変わるもの、遠目で観ていたときの方が良かった・・と、勝手なことを考えたりしました。夕刻からは還幸祭。あちこちで用事をすませて四条通りへ行きつけば、「ホイト!ホイト!」の威勢の良い掛け声が聞こえ、新町通りや烏丸の交差点で、熱気あふれる行列に出くわすのです。

8月20日に取り付けた門扉
深緑で塗装したスケルトン仕様

上手な方の茅の輪
使い込んだ長刀鉾の
ポシェットと・・

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レストランハウス

まるでイギリス!

函谷鉾のお囃子 四条室町

宵々山の子どもたち 占出山で

長刀鉾のお囃子

キエフ屋上から四条大橋と鴨川床を望む

還幸祭 四条新町

四条烏丸交差点

31日(日)はひと月続いた祇園祭りの最終日。八坂神社の「疫神社」で夏越祭が行われて終了。丁度いつもお墓参りに出かけた帰り道ですから、茅の輪をくぐりお参りして、脇に置かれた茅を抜いて小さな輪を作り、厄除けとして持ち帰ります。個性の出る仕上げですが、上手な方がいて写真を撮らせていただきました。この方も毎年参拝されるそうです。

狂言・灌ぎ川

ラストのナイヤガラ

30日(土)19時から京都駅大階段の室町小路で繰り広げられたのは「プラハの夕べ}。姉妹都市締結20周年記念行事のひとつです。プラハのヴィノフラディ劇場で感動させられたチェコの狂言師も数人来日。日本語の巧みなヒーブルさんの解説で2度めの演目がしっかりと理解出来、茂山一門のサポートも年期の入ったフレンドリーなものでした。市長さんはじめ関係各氏にもご挨拶。
8月から一応夏休み、3日(水)は亀岡に行きました。園部のYさんと待ち合わせて京都学園大までバスに乗り、コミュニティーバスに乗り換え25分。稲田の緑が夏!訪れたのは「イギリス村?」。もう大阪・能勢が近い京都の奥まったところにイギリスのカントリーが出現。前から聞いてはいましたが、初夏に出会った奈良の素敵な花屋さんがお友達というので興味が湧いて・・。バス停の真ん前に広がるイギリス!小川が流れ羊もいて、小さなコテージもまるでイギリスの田舎です。ロケーションはウエディングパーティーにも提供されるようで、B&Bまであります。
入口のショップでランチの予約をしてからコッツオールズかと見まがう風情を楽しみながらレストランハウスへ着けば、2階のテーブルでイギリス風ランチ。ちょっと小ぶりのテーマパークっぽいけれど、きっとファンも多いのでしょう。回数券もありましたから・・。帰りのバスを待つ間、風が爽やかで高原のようでした。





5日(金)、大阪・国立国際美術館へ1級建築士のMさんと「始皇帝と大兵馬俑」展へ。1昨年、タペストリー「西安」を制作したときに描いた「兵馬俑」は、実物ではなく、写真を見てのものでした。Mさんは京阪沿線に住まわれ、A新聞の読者ですから販売店から、私同様(この頃は1枚しかもらえないことも)「招待券」をゲット出来ると思い誘いました。京阪・中之島線の「渡辺橋」で待ち合わせ。大阪・淀屋橋にある大企業に長年勤められたMさんに連れられて、初めての美術館へまいります。ロイヤルホテルからも近い美術館は地下に展示会場があり、まずは発掘された玉や装飾品の数々に圧倒され、等身大と言われる兵馬俑への期待も高まります。スロープを下りていくと、徐々に見えてくる兵士たち。2.000年前のものとは思えぬ精巧な作りであり、人物の顔や体、衣服まで1体として同じ物がない表現力に見入ります。生前から制作を開始していた始皇帝の力が絶大であったことも伺い知れることです。レプリカではあるけれど「4頭馬車」も壮麗!多分西安まで行くことはないと思うので、遅ればせながら貴重なアート展でした。
お楽しみのランチの前に川沿いにお洒落なブティックを見つけてお邪魔します。この頃は絶滅していくばかりの雰囲気のあるショップ。フランスで買い付けてきたというインテリアやインディゴブルーにまとめたファッションは素敵です。中之島川との境いは土塀で、手前に小ぶりのガーデンがあり、テーブルも置かれて、お茶も希望すれば出してくれるそうです。感じの良いオーナーさん!うんざりするほど似通ったお店の多い中で、「いいとこ見つけたネ」と、Mさんと猛暑日の外出を讃えあいました。

9月に入って初めて汗をかかない日でした。夏のリフレッシュを糧に次の目的へ向かって日々精進です。1回で納まりきれなかった「夏日記」続編は近いうちに・・。夏の疲れが出ぬよう過ごしましょう。  asako


2016/9/10

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夕暮れの鉾

マリメッコの代表的な花柄”ウニッコ”

ポール・スミスのリボン

暑い夏でした。地球の温暖化で、この夏京都は熱帯夜でなかった日を数える方が片手ですむそうです。台風も迷走し、思いがけない進路から上陸しました。熊本でも余震があり、北へ南へ平穏を祈りながら、相次ぐ台風の来襲に戦々恐々の日々でした。
炎暑の中で夏休みを過ごしましたが、避暑に出かけることも無く、夏期補習の無いお盆の一週間のみを念願の片付け仕事に当てました。溜まった雑誌類や布類・雑貨・製図の整理など、本当に心の折れる時間でしたが、思いがけない所から心騒がせる品々が出てきたり、プライベートなアトリエにある、細長本棚の位置を替えただけでも風景が一変し、インテリアって魔力のあるものだと実感。夏期補習には東京から今年も午前・午後のレッスンを受けに来られた方々もいて、いつもはクラスの異なる京都クラスの方々の交流もありました。

8月末には夏糸と秋冬糸の入れ替えをし、9月2日に東京へレッスンで上京して新学期!京都も6日から秋の学期が始まりました。夏休みの宿題のように手描きの「テキストⅣ」を仕上げたり、アトリエに飾るジャクリーヌ・ゴヴァンさんが制作してくれた「天使の額絵」も秋の天使となり、やはり季節の変わり目に気を引き締めるように備えるリセットは、長く続けるためにも大切なことだと思うのです。遠くには行きませんでしたが、この夏はまだ6月の旅の余韻が漂い続け、そのことも含めてこの夏の雑感といたしたく、どうぞお付き合いください。

イギリスのバラ?

同日夕刻から宝ヶ池で「乾杯の夕べ」、S夫妻に誘われて出かけます。京都国際会議場・ガーデンパーテイ恒例の打ち上げられる花火は京都で唯一のもの。広い敷地に縁台が置かれ、入場券に含まれる「お弁当」と飲み放題の縁日気分。池には舞台もあり、バンドや歌のステージが会場を盛り上げます。今年は姉妹都市締結20周年を記念して「チェコの夕べ」でもありました。チェコの女性が歌っていると思っていたら、「次は、おお牧場は緑を日本語で歌います」とアナウンス。そして「チェコの歌だと知っていますか?」と尋ねるので、思わず手を上げると「知ってる?」と嬉しそう!プラハのDJガイドさんに教えてもらいましたもの・・。おかげで休憩時間にロビーでチェコの本を売っていた歌手さんに会えて、6月にプラハへ行ってタペストリーを展示したことなどをを伝えると、「私はチェコセンターの歌って踊れる東京支局長!」とエヴァさんは手を握って離しません。「チェコセンター・プラハのダリヤさんが着物を着て来てくれた」と言うと、「彼女は・・」と色々教えてくれて、自分は「ヨーガンレールに勤めていた」って驚きの告白。エヴァさんとダリヤさん、ふたりのチェコ女性とお付き合いが深まりそうです。
トルコ航空から航空券のプレゼントや会議場の前にあるプリンスホテルの宿泊券など豪華賞品のくじ引き会も終わり、いよいよ花火大会です。鬱蒼とした森に囲まれたロケーション、アカデミックな地域ですから欧米人の方たちも多く、皆さん浴衣を着て楽しんでいます。
花火は見事で生涯で一番の美しいものと思い感激です。Sさん夫妻も、その印象に誘って良かったと喜んでくれました。
旅から帰って間もなくのこと、1日1回、それも18:20から開映という映画を観に、仕事を終えてから出かけました。東寺の「みなみ会館」で上映されたのは『ファブリックの女王』。マリメッコの創始者、アルミ・ラティアの生涯を描いたものです。Marimekkoとはフィンランド語で「小さなMariのための服」。田舎っぽいという意見もあったようですが、MariはArmiに置き換えられ、創業者として社名の中に今も生き続けている・・とパンフレットにありました。潰れかけた夫の家業(テント)を立て直すために、アルミが考えたのは魅力的な布作り。大胆な花柄も含めて紆余曲折を経ながら、ジャクリーヌ・ケネディが着たことで世界に広がり急成長を遂げます。しかし個人的には離婚や子どもとの不和、またヘビースモーカーであったことから体を壊し、職住一体とした「マリメッコ村」をポルボーに造る夢が実現されぬまま60代で早世してしまうという、巨体であったことも意外ですが壮絶な人生ドラマにビックリ!でも社員思いであったことや、今も引き継がれているポリシーに感動しました。旅の前に観ていたら、また違った思いでマリメッコを訪れたかも知れないけれど、35年前に訪れたとき、ヘルシンキで買った紺色の帆布のショルダーバッグは、シンプルな箱型で三つのポケットがあり、ベルトの止めの左右に赤い四角のデザインが、さりげない黒地のネームと共に魅力でした。そういえば帆布バッグの走りだったのですね。長い間愛用していたことを懐かしく思いだします。現在も似たようなバッグはあるけれど、初代のものはやはり味わいのあるものでした。
もうひとりアーティストの展示会が夏の京都近代美術館で開催。『ポール・スミス展』はこれまで同美術館で見たことの無い若者たちに溢れていて、若年層に支持されていることが混雑ぶりからも分かりました。また入口で渡されたピンク色のお洒落なイヤホンは、スマホに接続して展示パネルのバーコードとリンクするものであり、ガラ系の私は返却しようとすると「どうぞお持ち帰りください」と言われてしまいました。パネルの文字を読めば済むことながら、ちょっと時代遅れを痛感した次第です。しかし20代にロンドンの一角でショップを持ったスミスさんの一坪空間を、白い立方体で体感させる工夫や、ハイテクを駆使した魅力的な展示には惹きこまれました。メンズ・レディースのフアッションから、18.000個のボタンを貼りつけた特大パネル、ストライプの車や時計などの小ものまで、それこそ世界中で愛されるデザイナーの、写真撮影OKという美術館としては型破りで見逃せない展示会でした。