旧市内のパーキングに停めて、駅まで歩きながらガイドもしてくださいます。ところが駅に着いてみると、乗ろうと思っていた列車は一つ向こう朝に降りた駅から・・と判明。レ・ゾーブレ駅はピレネーの方からやって来る幹線の駅で、オルレアン駅は支線の終着駅だったのです。責任を感じたシルヴィーさんは、ゆっくり歩いて30分もした距離を10分で戻って来ると言い残してコンコースを走って行かれます。タクシーでも行けるのに申し訳ないね、と里美さんと小雨の降る駅舎の外に出てみれば、なんとトラムが走っているではありませんか。「あれでも行けたのね」。買ってしまったチケットの列車は多分行ってしまったし、まあゆっくり帰ろうと30分経ったころシルヴィーさんが到着。敬服するほどのご親切と共に、また一つハプニングで想い出が増えました。
全てがスムーズに行けば、経験することが出来なかったでしょう。なぜなら、シルヴィーさんとお別れしてチケットを交換してもらおうとしたら、次のパリ行きはカードで予約の方のみ・・・。またその次の列車に替えるには手数料として半額取られるって信じられない!里美さんと唖然!おまけにどこか遠方からやって来たのは、昔懐かしい6人一部屋のクシェットタイプ。何10年ぶりでしょう。
本来私たち二人の席である窓際には、20歳くらいの青年がすでに居て、仕方ないからドア脇に向かい合って座り、私は疲れと暖かい車内で即寝てしまいます。行きより30分も余計にかかって(同料金+半額)オステルリッツ駅に着いたのは6時半。窓際の青年がその後泣いているのを知った里美さんは、ハンカチを出してあげながら訳を聞き、別れた両親の為に、今回は遠くにいるお父さんを訪ねた帰りとか、お母さんとパリに住んでいるのだそう。お父さんっ子だったのですね。ホームの雑踏を歩きながら語ってくれた、列車ならではの一コマを見逃した私です。 つづく




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つめたいばかりの冬もそろそろ後退でしょうか。オリンピックも快挙が
つづき、まるでひと足早い春の訪れのようでした。

2月の初めに、丁度所用があり、寺町の一保堂さんの裏手にあるという
シルヴィーさんのご主人の経営されるゲストハウス『京都モーリス・ホステル』を訪ねました。昨年9月に出来たばかりです。二男のセバスチャン君が働いているということ。行ってびっくり!京都の町屋風かと想像していたのですが、明るイイメージでガラスと格子のような外観とフローリングのモダンな建物です。
朝食の片付けをしているところへ案内され、「はじめまして・・」。お母さんから飛行機の中で会ったことを聞いていたようで、ちょっと覗いたことを喜んでくれました。「お家へ行ったのよ」と言うと、「えエ 行ったの!」と彼が育った家を知ってる京都のひと、ということに笑顔が弾けてくれました。
またね、セバスチャン。

2018・2・20  asako


11時半、シルヴィーさんが待ってくれています。里美さんと引き合わせますが、二人はもう電話で話しているのでフランス語でご挨拶。可愛い車!と思っていると、この車、昨日買い替えたところって日本から帰った次の日?「貴女は新車に乗れてラッキー!」と言ってくれました。日産の、車種は分からないけど(多分欧州仕様)丸っこくって可愛い車です。
ほんの5分で終着のオルレアンの駅舎を見ながら旧市内をドライブ。オルレアンは1492年にイングランド軍に包囲され、その陥落を防いだ女性騎士、ジャンヌ・ダルクで有名ですよね。18世紀や19世紀に造られた味わいのある教会や市庁舎を巡り、グーグルのストリートビューで見ていた石畳の趣ある小道を抜ければロアール川に突き当るのですが、河川敷まで水が溢れていて、この冬は雨が多かったからのようです。
石橋を渡り、川沿いの丈高いポプラの並木道を通り抜け、緑に囲まれた小ぶりの城館を眺めたり、小さな村で曲がってまだ走ります。二つ目の村にたどり着いたところで右折。少し行くと「ここです」。まあなんて可愛い家!300坪くらいの林に囲まれたシルヴィー邸は、お庭の向こうに森に囲まれた池があり、そこも敷地のように取り込んで、とにかく広い!落葉樹でふかふかの足元にはドングリも落ちていて、まるで樫の樹林の一軒家。暖炉には薪が赤々と燃え暖かい。リビングやサンルームには、趣味だと言われたパッチワークの作品がさり気なく置かれ、そういえば玄関ルームの縦長窓にもお洒落なカーテンが掛かっています。
私たちを迎えてくれる前に走り回ってくれたのでしょう、車に積まれていた大きなお花のアレンジメントを花瓶に活けてウエルカムフラワー!細長いバゲットもテーブルに。早朝から準備してくれていたなんて驚きのランチは、ジャンボン(ハム)と野菜サラダの前菜、メインは牛肉のシチュー。パウンドケーキまで焼かれて、おもてなしの心も味わいながら冬の午後を過ごします。

冬空のパリ Ⅱ

突然のことで何の準備も無いので、私がプレゼントしたのは着用のつもりで持参していた「ブロック柄と二重奏のベスト」。申し訳ないほど着古していますが、なぜかサイズもピッタリ。里美さんは新作の『マンモスのみずあび』=BL出版=をプレゼント。シルヴィーさんのご主人は、お仕事であと半年を日本で過ごされるし、長男さんは東京、二男さんは京都ですから、論文に取り組む日々、シルヴィーさんはこの家で一人です。
20年前までオルレアンの北側に住まれていて、南に当たるこの辺りに家を探しに来ていて、目的地への道を間違えたことで出会った土地。林を切り拓いて建ちあげ、二人の息子さんを育てた、おとぎ話にでてくるようなお家です。きっと想い出に囲まれて、静寂の中でのお仕事は捗ることでしょう。
機内で偶然隣り合ったご縁で訪れさせていただいた夢のようなひとときも、おいとま時間です。機内でロワール川の「古城巡り」というフランスツアーで欠かせない観光ルートも未経験と話していたので、これからそんなお城の一つに「案内します」との嬉しい提案に「もう夕暮れどきだからまたいつか・・・」。駅まで送ってくださるのはもちろん、列車の時刻も調べてくださり、名残惜しいけれど再びオルレアン市内へ。

1月4日(木)、前日に連絡がついたオルレアンのシルヴィーさんに会いに行きます。メトロのアベッセ駅から12番のISSY行きに乗り、セーブル・バビロンで10番に乗り換えてオステルリッツ駅へ。セーヌ川を挟んだリヨン駅は馴染みがあるけれど、初めてのオステルリッツ駅は、フランスの南西部へ向かう路線でこれまでご縁がなかったのです。
ひょんなことから巻き込まれてしまった里美さんが、オルレアンには行ったことが無いからと、一緒なのは心強い!チケットだってカードで買わねばならず、一人だったら迷ったことでしょう。丁度特急がスタンバイ。いつでもパリを出るとすぐ、フランスは農業国だと実感させてくれる草原を、ノンストップで駆け抜けます。葉を落とした樹々には、この季節にしか見られない丸い緑のオブジェのようなヤドリギがいっぱい!
1時間でオルレアンの一つ手前のレ・ゾーブレ駅で下車。これは機内でも教えてくれた大事なこと。終点のオルレアン駅ではパーキングが難しいからとのことでした。

オステルリッツ駅にて

2月半ばにメールで送ってくれた
雪のシルヴィー邸

オルレアンの旧市内

早春の窓辺

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『ベルサイユの薔薇』時代を
彷彿とさせる貴族の館

街灯にキュートな天使


広場のジャンヌ・ダルク像

シルヴィー邸の
リビングルーム