さあ帰りましょう!オルレアンのお家を目指して、また最初のシャンボール城の森を抜けて走ります。南隣りの村の角を曲がって北へ森をもう一つ抜けると着きました。シルヴィーさん、お疲れさま、そしてありがとう。
30代からのパリ旅の折に、訪れていなかったからこその「ロワール河の古城巡り」でした。パリからの日帰りツアーでは訪れきれないあちこちを、この河沿いで生まれ育ったシルヴィーさんだったから与えていただけた、本当に宝もののような2泊3日となりました。
お茶のあと、まだ明るい夕暮れの窓辺で手仕事をするふたり。シルヴィーさんはパッチワーク。ときどきお友だちが来てキルティング・ビーもされるとか。ガラス張りのサンルームには、大きなベットカバーの仕上げ中がキルテイング台に巻かれています。ようやく「天使のモチーフ」に取り掛かれた私と、新しい作品の布合わせを始めたシルヴィーさん。心地よい時間が過ぎてゆきました。

5月30日、朝窓を開けていると、シルヴィーさんが庭から「アサコさん、隣村のパン屋まで行って来ます」。私はアサ寝坊したのでしょうか。気もちの良い朝です。テーブルには焼きたてのクロワッサン。4泊もさせていただいて、なおかつ駅まで送ってくだされば、リヨン駅まで行ってタクシーで里美さんのモンマルトルまで行こうと思っていたのに、これはパリに着いたときに宣言されたのですが、「いいえ一人では行かせません。送ります」と言って、おまけにオルレアンの北にあるプライベート庭園へ寄ってくださる。

途中見渡すかぎりの麦畑を縁どるように赤いポピーが咲いていて、あまりの美しさに車を停めて撮影会。花の季節はどこもかも絵になるのです。
アルボレタム庭園は貴族の館を一般開放していて、それは見事なものでした。庭園を管理する女性は、さすがパリも近くお洒落でキュート!「写真を撮っても良いですか?」と尋ねると、「良いですよ、でも館には未亡人がまだ住まわれているので、そこだけは避けてください、そして必ずアドレスをね」。きちんとした対応はWELCOMの心づかいと清々しいものがありました。
昨年、ご主人を亡くされたオーナー夫人の窓辺は、白い蔓バラが額縁のように囲んでいて、それは一枚撮りたい光景でした。
しかしもうきりがないので、この庭園のことは写真の説明でお許しください。
付け加えたいのはランチです。ひと気のない駐車場は、西と南に森があり、北と東に畑が広がっています。伐り出された丸太に腰かけて、シルヴィーさんのお手製サンドイッチ(バケットにハムとチーズ)それにヨーグルト。梢を揺らす風と鳥のさえずり、極上のランチタイムとなりました。

クレマチスの垣根

ブロワ城

さて、いよいよブロワ城。この旅のことを里美さんに伝えたとき、「この間、図書展でブロワに行ったけど良かったわよ」。どのような城下町なのか興味深いものがあります。しかしたどり着いたブロワはとんでもなく大きな街です。巨大な街城を見上げながら車を停めていざ街歩き。
坂道を上ったり下がったり、にぎやかな通りを歩きます。一番の目的はメルスリー。どうやら小さなデパートの中にあるようです。お洒落なインテリアショップの2階、布地や毛糸もあります。しかし棒針は目的のものが無く、竹製だけど輪針を見つけて妥協。ショーモン城でエネルギーを使い果たしたようで、もうお城に登る気力も衰え、街角のレストランでランチ。ブルターニュもそう遠くないことから、蕎麦粉のガレットでブロワッ子たちの夏休みに紛れたひとときでした。

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Arboretum庭園

arboretumdesgrandesbruyeres@gmail.com

初夏のフランス旅 Ⅳ

シャクヤク

帽子売り場にヨットが浮かぶ

印象的な木立ち

ショーモン城

美しさが増したボン・マルシェ

5月29日、楽しいドライブ最終日。ホテルのレストランでまたたくさんのジャムたちに見つめられながら朝食のあと、チェックアウトして出発!
ロワール川に沿ってオルレアンに戻るように進んでいると大きな集落、ショーモンの城下町が現れます。ショーモン城は広大な庭園が特徴です。ブロイ公をはじめとする歴代の城主は庭造りに情熱を傾けたようです。アンリ2世の妻であったカトリーヌ・ド・メデイチがショーモン城を買い取り、1559年に馬上槍試合でアンリ2世が亡くなると、愛妾であったデイアーヌ・ド・ポワティエにシュノンソー城を返すように求め、代りにこのショーモン城を与えました。デイアーヌの娘は、母亡きあと大庭園構想を描いた最初のひとでした。
紆余曲折を経た城は、現在突拍子もないプロジェクトが盛んで、訪れたときには世界から集まった造園家?が、自分のスペースに奇抜な庭を創り出し、「国際庭園フェスティバル」を開催中。美しいというよりフランスの庭園で創造力を爆発させている感じ。写真に撮るべきものは無かったということです。
村の道からロワール川を右手に眺めながら、坂道のあちこちで見かけた可憐な花たちや、広々とした庭園の何気ない小道に咲く花々には心惹かれました。

夕刻、パリの環状線(ペリフェリーク)に再び乗り入れ、クリニャンクールで降ります。ここまでくれば私にもなじみの界隈、里美さんに「もうすぐ!」と電話をすると、この日は「モンマルトルの丘に住人以外は登れないから、下まで下りて待つ」って、デモと関係があるのでしょうか。わあ居た!里美さん、飛び降りてきたのかと思うくらい早い、約束の場所に同着です。
グルッと丘の下を回って、検問をパスしていよいよシルヴィーさんのニッサンがモンマルトルの丘を登ります。パーキングは里美さんのアパルトマンの管理人さんの好意で、ガーデン下にあるガレージの空きスペースへ。
一年半ぶりの里美邸。ルバーブのタルトを作って二人を待っていてくれました。活きの良いスイトピーも素敵!暗くならないうちにと、シルヴィーさんがオルレアンへ向けてGO!モンマルトルの葡萄畑の方へ下りて行くニッサンの後ろ姿を、感謝をこめて見送りました。

アベッセ駅への坂道の途中で、秋田犬を連れた日本の方と・・

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長いような短いような夏休みが終わりました。夏糸と冬糸の入れ替えをしたり、「イベント」欄でお知らせを開始した箱根展の準備と、もうひとつ京都とプラハで展示をする額絵の制作で目が回りそうです。
でもこの夏は夏らしい想い出も幾つか。そのひとつ、7月末にスエーデン・ウプサラに住む美代子さんが息子さん一家と九州へのお里帰りを兼ねて三週間の日本旅行をされ、京都にも十日間滞在。その一日、アンジュへも来てくださいました。
初めてウプサラへ行ったとき、中学生だったアンデス君が二児のパパなんて、私は幾つ歳を取ったのでしょう。男の子二人とはもちろんリンダール邸で会っていますが、長男ケビン君は秋から高校生。すっかり大人びて次男のロビン君はまだ小学生。相変わらず可愛い。一緒にランチに出かけた山科の「再会」で記念写真を撮りました。

「初夏のフランス旅」が終わりません。お許しください。また近々、残暑きびしき日々、どうぞお元気で。  

5月31日、この日は里美さんとパリ歩き。まずはメトロの「アベッセ」駅から「バビロン」へ。大好きなデパート「ボン・マルシェ」はひさしぶり、ところがニュースにもなった大改装のあと、どこもかも近寄りがたい雰囲気です。お洒落な手芸売り場も消えていました。布張りの使いやすい、今でも使っているお針箱を新調しようと考えてきたのに残念!しかしアートな売り場は目が釘づけ。
サマーハットは楕円形のプールにおもちゃのヨットを浮かべ、その周りにバカンスに似合いそうな帽子がディスプレイ。
さあランチは、私の持参したガイドブックを昨夜里美さんが見ていて「虎屋のランチ」を希望。話には聞いていたけれど行ってみましょう。

つづく  asako 2019.8.30      

二人で手仕事タイム

ブロワの旧市街

サンルームに置かれたキルト台

ガレージを出たところ、観光客が
シルヴィーさんのニッサンを見ている

パリで撮影予定の
ベストの糸始末

サクレクール寺院の裏手、修道院を望むテラスのふたり

草むらの忘れな草

11月には京都でまたね。

トピアリーとアイリス