本当にトップ・オブ・ヒルにあり歴史的建造物に指定されている里美さんのアパルトマンは、モンマルトルの喧騒からは想像のできない緑に囲まれ、瀟洒な数棟が点在しています。奥まった棟の4F。いつもならガーデンの向こうにサクレクール寺院の背景がパノラマのように広がるのですが、もう7時をまわり夜の闇で残念。おまけに珍しく建物のリニューアル中、全体に覆いが掛かっているのも無念なこと。昨年5月以来久しぶりに会った里美さんは「夜で良かったわね」。皆さん靴を脱いでメゾネットスタイルの可愛い空間、私のオアシスである里美邸に興味深々。ワインやジュース、それにルバーブのタルトなど三枚も焼いて待っていてくれて感激です。
旅の途中、参加者の方が「里美さんへのお礼は何にしたらよいでしょう?」と気をつかわれましたが、私も考えていて出発前に、もし絵本の在庫があるならばお一人1~2冊分にサインをしていてくださらない?」と電話をすると、さっそく地下の倉庫へ行って探してくれたようです。お互い何よりのプレゼントとなって幸いでした。
いつまでも居たいけれどバスも待っています。大慌てで石畳の道をサクレクール寺院へ向かい、途中に画家たちが似顔絵を描く広場も見ながら、いつになく空いているモンマルトルの観光もできました。寺院前のテラスからパリの夜景も眺め、送ってきてくれた里美さんともさようなら。そしてフニキュール(ケーブルカー)で丘の下に降り、待っていてくれたバスでホテルのあるエッフエル塔方面へ。
マドレーヌ寺院やコンコルド広場を抜けて、右手のシャンゼリゼ通りを見ると凱旋門まで真っすぐ、赤と白のテールランプとフォグランプの行列が美しい。エッフエル塔なぞ登ったことがなく、夜空に間近で見上げると美しいものでした。
ようやくホテル着。以前「ホテル日航」だったところなので、和食のレストランでラストディナー。短いけれど充実した旅であったことを振り返り夜は更けてゆきました。

3月9日、、前日とは違う空港までのガイドさんがスタンバイ、「どこかでスーパーマーケットに寄って欲しい、できれば『モノプリ』」とお願いすると、はじめは空港での時間を逆算して無理そうでしたが、粘っていたらホテルのスタッフに近くの『モノプリ』を尋ねてくれて、なんと受付フロアのある2階からテラス伝いの向こうにあるとのこと。奇跡としか言いようがありません。しかも9時オープンですからジャストです。おかげで大人気の『モノプリ』のエコバックを皆さんお土産にたくさん買い求めることができました。
空港へはセーヌ河畔を走り、左岸のオルセー美術館もセーヌ越しに見ながらノートル・ダム大聖堂で左折してルーブル美術館を右手に垣間見て、オペラ座横も通ってもらい、おマケのようなパリで、パリは初めてという方にも束の間のプチ市内観光が叶いました。
空港はコロナの影響でしょうか、いつものような混雑もなくターミナルまで行けて、ゆっくりしたあと13:10無事AF292便は飛び立ち、翌10日、08:55関空に着陸。全員感染症の疑いもなく帰宅することができました。

この数日後、パリはロックダウン。TVでは、あの美しい夜景を見せてくれたシャンゼリゼ通りやエッフェル塔付近も人影がなく、里美さんからは朝早くにモンマルトルの丘を散歩しているとのことで、カメラを持参していて朝陽の当たる光景を送ってくれました。今はロックダウンも解除されていますが、UP/DOWNのある丘歩きで体を鍛えていることを知って安心しているところです。

2020・5・21  asako

エッフェル塔の夜景 バスの車窓から

2020 ポルトガル・モロッコの旅 Ⅴ

3月8日(日曜日)、フェズは今日も快晴!朝9時ホテルを出発。ホテルの前に停まっているバス前の歩道に何か並んでいます。まあ!歩道に直に置かれた写真は昨日のもの。そういえば王宮からスーク(市場)などで、ちょこまかしながらシャッターを切っていたおじさんがいましたね。結構あちこちで撮られています。仕方ない、おじさんの努力に脱帽しながら、皆さんと一緒に数枚買いました。でもさすがにプロ、さりげないショットは嬉しいものです。
ホテルのある新市街は日曜日が休日で、街はひっそり。魅力あふれるスークに心惹かれながら空港のある首都ラバトへ。
カサブランカからフェズまでが、二等辺三角形の底辺だったとしたら、ラバトまでは頂点をめざします。ラバトも海岸沿いにあるので、フェズは結構内陸にあったのですね。途中で休憩しながら約2時間半。車窓に丈の低いサボテンを見ながら、マダニさんの日本語はこの日も絶好調。2泊3日もご一緒していると、なぜ日本語にのめり込んだのかが分かってきました。

アプローチのノイバラ

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3月9日 小雨のパリ・セーヌ河畔

マダニさんは古都マラケシュのご出身。大学では経済を学び銀行への試験も受かったのに、まだワイロがきく時代で豊かな家庭ではなかった故に断念されたそうです。傷心を抱えてフェズの絨毯屋さんへ就職したのは30年近く前のこと、そのころでも日本からの観光客は多くて、何を言っているのかさっぱり分からず、困ったというより残念だったそうです。そんなお客さんから本を貰ったりして日本語に興味を抱き、以来独学で猛勉強して、ついにガイドになりました。今ではカサブランカにある日本大使館の催す日本語検定の2級を保持!まだ日本へは来たことが無いって本当とは思えません。現在はフェズに住み、娘さんが二人いる優しいお父さんのようです。
さて、ラバトの王宮(国中に幾つあるのでしょう)の脇を通ってちっちゃな空港へ。衛兵さんの派手な制服も見慣れてきました。空港は一日の便数が極端に少ないようで閑散としています。マダニさんともお別れ、バスの運転手さんと、荷物の積み下ろしを手伝っていた青年はマラケシュへ帰るそう。マダニさんは列車でフェズへ。みなさんお世話になりました。最後にマダニさんから「・・・・皆さんのように優しい方たちと一緒に案内できて嬉しかったです。」なんて日本語で言ってくれるガイドさんはそういません。今までで一番印象に残るガイドさんであったことが加味されて、より心に残るモロッコとなりました。

ラバト・セール空港

みなさまお変わりありませんか。新型コロナウイルスも感染者数を劇的に減少させ、本日、大阪・兵庫・京都の自粛解除が確定のようです。この間、4月5月はレッスンを休講とし、各月5日間ほど予約制の特別レッスンをいたしまして、不要不急と思わずに来てくださった方々と、やっぱりレッスンは楽しい・・と思える時間を過ごすことができました。またレッスンのない日は新しいデザインを手掛けたり、この秋刊行予定の本の仕事に専念できて、宝もののような貴重な時間となっています。
いつのまにか春の花々は咲き終り、新緑が日毎に繁みを深くするころ、この後、2次3次感染が
戻らぬように気をゆるめずに過ごしたいものです。
ただひとつ気がかりは、今回の旅でガイドを務めてくれた方々のことです。アムステルダムのUさん、ポルトガルのY女史、そしてモロッコのマダニさん。きっと旅行者やビジネス客も減って大変なことでしょう。幸いなことに感染者もさほど多くない国々でしたから、無事に過ごされていることを祈っています。

爽やかな日々がつづきます。しかしこれから暑さに向かいます。どうぞお体ご自愛ください。

パリ・ピガールのムーラン・ルージュ

モロッコを離陸

フェズのホテル前

14:10AF(エールフランス)1259便はパリに向けて飛び立ちます。すぐに海岸へ出てモロッコが遠ざかる、と思うまもなくポルトガルをかすめてスペイン上空。再びヨーロッパですが、パリはどうなっているのでしょう?出発前に添乗員U氏のスマホ情報によれば、パリは管制塔ストですって。アムステルダム周りでしたから、この間にストが回避されていることを願います。また新型コロナの影響かいかがかと不安が増してきます。
17:10パリ「シャルル・ド・ゴール空港」に着陸。イミグレーションは見たことのないほどガラガラ。体温を測るサーモスタットも無くスルーして拍子抜け。そして皆さんを里美さんのアパルトマンへご案内できると思うと感慨無量。
30代前半から始まった私の海外旅行は、そのころ南仏に住んでいた手芸家のジャクリーヌ・ゴヴァンさんと、京都で開かれていた展示会で出会ったことから、ご自宅を訪問させていただくことが劇的なターニング・ポイントとなり、以後旅行社のツアーではなく個人旅行に切り替えました。
通り一遍の観光でなく、ご自宅を訪ねることで得られる文化や歴史はかけがえの無いものです。以後40年、友人も少しですが広がり、そのひとり絵本作家の里美さんとはもう35年のお付き合い。モンパルナスのエレベーターのないアパルトマンの5階まで上ってお邪魔した日から、私たちはお互いの仕事に敬意をはらいながら友情をあたためてきました。いつの日かアンジュの生徒さんたちに里美さんの暮らしを見せてあげたいと思いつづけ、数年前にそのことを伝えると、「パリにいるときならいいわよ」と嬉しい言葉。今回、その夢が叶います。
ところが待っていてくれたバスが大型。モンマルトルの丘の上まで登るのに、勝手にマイクロバスを想像していたことを悔やみます。10人分の荷物も運ばなければなりませんものね。普通は都合の良い時間帯に飛ぶ飛行機が無いためのトランジットですから、空港からホテルへ直行がお約束。そこへたとえわずかでも立ち寄りをお願いしているのに、遠回りの時間も気になります。出迎えてくれた在住10年という30代の日本人女性は、それでも良い策をと考えてくれて運転手さんと掛け合い、とにかくピガール広場まで行けました。モンマルトルの丘の中腹にある昔の歓楽街、皆さんにとって赤い風車の看板がネオンに輝く様子を見ることができたのも幸いでしょうか。いつもの循環バスのバス停は遠く、里美さんに「今、ピガール」と電話をしてからタクシーを捕まえ、分乗で丘の上を目指します。

里美さんのアパルトマン
昼間の光景 2019年5月

フェズの新市街 風になびくモロッコの赤い旗

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