さて、冬(秋につづき)の夜長はとくに就寝前の読書が楽しみです。毎夜、軽いストレッチをふくめたルーティンを終えると、あのつづきは?と思うときが至福です。
とくに好きな北欧もののミステリーにハマっていて、先日読み終えたのは『影のない四十日間』。フランスのジャーナリストがスエーデン・ストックホルムにおいて北欧特派員として活躍しながら仕上げた長編です。ノルウエー北部のサーミというトナカイ放牧で生きる少数民族を巡るもの。白夜の反対の極夜の物語は一日の日照時間が短い冬の間に起こる壮絶な物語でした。
見知らぬ異国の歴史や文化と自然に彩られながら、過酷な環境の中で事件を解決していく地元警察の動きも興味深く、最後まで引き込まれっぱなしでした。ミステリーでもなんでも小説も旅本と考えていますが、極北は多分これからの旅の目的地にはならないけれど、知らない世界を知った感はあります。

つづけて読み始めたのはアイスランドもの。首都レイキャビックで繰り広げられるのは、タイからの移民の子が雪の路上で発見されたこと。グローバル化した世界のどこかで起きてもおかしくない事件のようです。タイトルは『厳寒の町』。アイスランドものは良く読んでいるので、おなじみの刑事さんたちが登場しています。しばらくハラハラドキドキしながら謎解きも楽しみです。
ミステリーばかりでなく原田マハさんのゴッホやモネなどアーテイストを描いた小説や、内田洋子さんのイタリアものの大ファンです。手元に読みたい本があるのが幸せ。幼いころからの読書習慣があるおかげかも知れません。

立春雑感

立春の日、その夕刻遅くにクロネコの即日便が届きました。ちょっと重くて中でチャプチャプ音がします。開封してみるとお酒!!丹波篠山在住の旧友からです。二本の瓶に巻かれた帯には『今朝しぼり』の文字。その日の朝に絞ったということ?初めてものの箱熨斗には『余寒見舞い』、なにもかもお洒落ではありませんか。
さっそくお礼をと電話をすると、「そうなのとってもやわらかいから飲んでほしかったの」とKさん。久しぶりでしたがお互い同い年で、何年経ってもちっとも変わらない二人の会話。

もう40年以上も前のこと、私が京都で暮らし始めて、さいしょの個展を寺町通りにあった小さなギャラリーで開いたときのことです。その『手編みのベスト30枚展』にお友達といっしょに来てくれたことから友情が芽生えました。当時、遠距離の篠山から大阪に勤めるOLでいたKさん。ひとなつっこい笑顔であったかい人柄に打ち解ける時間はかかりませんでした。毎日の通勤も大変だろうと思うのに、「伊丹の辺りで見上げると、(空港から)離陸したばかりだから窓にひとの顔も見えるのよ」とくったくがありません。そのころは旧国鉄の福知山線でのことです。
いつのことか、Kさんがただものではないと思うようになりました。それは趣味で描いているというパステル画を見せてもらったことです。素朴画といえるナイーフ感に溢れ、当時はバブルが始まったころで絵画の価値も上昇していましたから、額装して個展を開けば売れるのに・・・と、アドバイスしても「そんな気はありません」と、納屋にしまい込む始末。いつかゆっくり描かれた絵の束を見せてもらいたいと思いながら歳を重ねて来てしまいました。
Kさんはお母さまの介護と看取りを終え、これからと思っていたら、ご親族の介護が待ち受けていました。時折の暮れに重いほどの黒豆が届くと、静かな城下町に暮らすKさんを思い、そのたびに会いたいなと笑顔が浮かんで来るのです。
「私の出身校なのよ」と、酒蔵「鳳鳴」を解説。そういえば名門の兵庫県立・鳳鳴高校出身でしたね。今年の年賀状に書かれていたのはコロナ禍を憂い「今年こそは満開の桜の下、皆様と集い・語り・笑い・歌い、そして乾杯・・・も出来ますように」。思わずクスッとしてしまいました。Kさんは飲むんだと再認識していたところの地酒のプレゼントは、香り高くまろやかで美味しくて飲みすぎないようにと要注意ものです。いつか会いたいねKさん!どこへでも気楽に出かけられるよう、コロナの退散を寅年の春に願いたいものです。

・・・

北京オリンピックが始まりました。素晴らしいオープニングを見ていて、この大会が24回目であることの意味が分かりました。第一回フランス・シャモニーから数えて24回目であること、そのことに中国は意味を持たせたかったのでしょう。それは24節季を意味し、開会式が立春であったことも腑に落ちます。3Dを多用した映像と登場する人々とのコラボレーションに惹きつけられるのは、演出がチャン・イーモー監督であることから納得できるものでした。あの「初恋の来た道」の美しくも哀しい映画を思い出しました。政府によるウイグル族への弾圧、同化政策は許されるものではなく、ハイライトでしか見ませんでしたが、聖火の最終ランナーのひとりにウイグルの選手を選んだことが、賛否両論噴き出しています。このことにチャン監督はどのように決断させられたのでしょう。李白の詩から雪の結晶がモチーフとなって冬のオリンピックらしいデコレーションでした。

今週はついにレッスンを休講としました。インフルエンザの座を奪った風邪と思いたいけれど、感染者数のピークアウトも見えず、大手を広げてWELCOMEとはいきません。私自身は先月に三回目の接種を終えました。レッスンクラスでは今年に入って「濃厚接触者」の家族という方々も出ました。どなたも結果は陰性とのことでしたが、昨年とは様相がちがいます。コロナの収束が一日も早いことを願うしかありません。寒さもつづきます。皆さまどうぞご自愛ください。お元気で。  
 2022・2・8  asako



追伸 先月号でご案内したバックナンバーを間違えていました。気づいて訂正しましたが、「冬の旅」でないところをクリックされたことでしょう。お詫びいたします。
更新してから文中の間違えに気づくのが遅いこともあります。申し訳ありません。
またバックナンバーにおける画面の乱れの改正は中々はかどりません。これもお許しくださいますように。重ね重ねどうぞよろしく。

1月21日、京都に大雪が降ったあとの
けなげなビオラとサクラソウ

つい先日完成したリメイクものの
テイーコゼー(ポットカバー)
春物のカーデイガンと早春の陽をあびています

いただいた『今朝しぼり』
アトリエの一隅にて