さて3日には東京クラスのレッスンで上京。翌日所用があり一泊します。月一回の楽しいレッスンを終え、借りているサロンのある六本木から深川方面へ向かいたく、ミッドタウン口(ぐち)から地下鉄・大江戸線に乗車。レッスン中に通り過ぎた夕立が東に移ったのか、そびえるビルの間から黒雲が見えていささか不安。初めての大江戸線ですが、麻布十番・汐留・築地・月島など、さすがに古き江戸を巡る路線に揺られて「門前仲町」に着いたとき、ちょうど雨が上がるところでした。
目的地は次の駅「清澄白河(きよすみしらかわ)」との中間あたり、清澄庭園にも近い『ババグーリ』。沖縄で事故に会われた故ヨーガン・レールさんのお店です。もうだいぶ以前に一度伺ったことがあり、東京では銀座・松屋、京都でも姉小路通りにある「ババグーリ」ですが、この本店のたたずまいは秀逸。ずっと再訪したいと思っていた心のオアシスなのです。
雨あがりの本通りから脇道に入り「清澄庭園」の裏手にある静かな店内にお邪魔します。シンプルな夏服やチクチク縫ったアジアの布で造ったクッション、陶器やアクセサリーも広々として天井の高い空間で気もち良さそう。目に止まったのはCD。店内に流れている心癒される音に惹かれたからかも知れません。手にしたCDを試聴させていただきました。静かな静かなサキソフォン。行ったことのある滋賀県の「ミホミュージアム」での録音というのも親しみを感じ求めました。まるで尺八のような音色を、雨に閉じ込められたアトリエで、ひとり聴きながら仕事をしているのは至福です。

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2022 夏雑感

申餅

藍染の
鍋つかみ

ナンタケットのバスケット

バンダナ

今回はアトリエの奥のプライベートなアトリエに収納していたものをリメイク!今までアンティークなレースや布などと重ねてあったものの中で、白い木綿地に赤糸で刺しゅうをした縁かざりが目に留まりまったのです。白地の爽やかさに惹かれて久しぶりにミシンを踏み、アトリエのフランス窓に掛かっていたスエーデン・ウプサラの村で開かれていたマーケットで見つけたレース地と入れ替えました。赤糸刺しゅうは何かから取り外した糸じるしがありましたが、何に使われていたのか分からず、多分パリ・ヴァンブののみの市で求めたまま忘れられていたブロカントウ(ガラクタ)がやっと目覚めてくれたかのようです。長さ2m50cmもあり、どこにもダメージのない美しい手仕事です。50年くらい前のどなたかが、ていねいに刺しゅうされた時間もいとおしく、さっそく見上げるような高さに飾りましたら、ジャクリーヌさんの『夏の天使』とともに、アトリエを見守ってくれているように思えます。

今年も梅雨の季節となりました。6月1日は衣替え。東京で中高一貫の女子高へ通っていた私には、セーラー服が冬服から白い夏服に替わるこの日が、チェンジという言葉どおりに一年のなかでもっとも印象深い衣替えの一日でした。

1974年に京都へ来て、1979年春に小さなショップをオープンし30年、2009年からはレッスンクラスのみのアカデミーとなって早13年。この間、シーズンごとにショップやアトリエのしつらえを替えてきました。ショップ時代は手仕事されるさまざまなアーティストの作品展も催し、1991年6月にはフランス在住のアップリケ&刺しゅう作家ジャクリーヌ・ゴヴァンさんの作品を展示し、テーマは『ジャクリーヌさんの12ヵ月』。その折の記念として「アンジュ」というフランス語の店名によせて、四季の天使を額絵にしていただきました。以来、年4回春・夏・秋・冬それぞれの天使を入れ替えて過ごしてきたのです。およそ31年、年4回とすれば計124回、計算してみると気の遠くなるような取り替え作業です。
もちろん現在はアカデミーに通われる生徒たちのために、参考となる作品を制作していますから、アトリエに展示する作品は随時入れ替えます。収集しているフェリシアさんの刺しゅう画も季節に合ったものと差し替える作業もあり、歳を重ねたこのごろは、高いところへ大きな額絵をかけ替えることもけっこうエネルギーを要するようになりました。

夏の手仕事時間

森の手づくり市

向かいには清澄庭園の子ども広場?

ブティック・ババグーリ

5日の日曜日、知人の染色展が最終日なので出かけるつもりで朝刊を読んでいると、下鴨神社で「森の手づくり市」の記事が気になります。「自然の中でものづくりに触れるスローホリデー」をテーマに、2010年からつづいているイベントとは知りませんでした。さっそく「市役所前」からバスに乗り、「下鴨神社」で下車して糺の森(ただすのもり)の北からお邪魔します。日曜日とあって本殿で結婚式をあげられた新郎新婦さんが、ご親族と記念写真に収まっていたり、お宮参りの祝詞があげられているお社で参拝したあと参道を南へ。
茶店に寄って葵祭でお供えされる申餅(さるもち)をお土産に。丈高い緑陰では陶器・木工・雑貨などの小さなブースが100ほど並んでいます。
毎年夏に催されていた「糺の森の古本市」には何回か訪れたことがありましたが、台風や夕立に合うこともあり、このごろは岡崎の「都(みやこ)メッセ」に場所を移したようで、うかがう機会がないと感じていたところ、知らなかった素敵な市の存在に気づかせてくれた新聞に感謝です。
93歳のお母さんが娘さんが染めた藍の布を縫って作った鍋つかみ兼ポット敷きをゲット!「おばあちゃんのいきがいプロジェクト」を家族で立ち上げたという、ほのぼのとした手仕事でした。またアメリカボストン郊外のナンタケット島で造られる「ナンタケット バスケット」のブースもあります。初老の紳士が座ってらっしゃるのも意外です。小判型のものを分けていただきましたが、あまりのお安さに驚愕していると「練習ですから・・・」と謙虚ですね。
森の緑が夏の陽をさえぎって、日傘いらずの散策となり、ゲットしたものを小川にかかる橋の低い欄干に並べ、カメラを向けると、橋の下から鯉が現れました。

ワクワクする時間をくださった糺の森に別れをつげて、つぎに向かったのは中京区堀川御池にあるギャラリー。ASANO MIYUKIさんの展示会。あかね・藍・蘇芳など自然素材で染めた糸を織り上げた作品は静かで凛としていて、「地中海の青」・「九月の雨」などタイトルもお洒落です。繊細で美しい作品と作者に出会えて佳き日曜日となりました。

関東より遅れていた関西の梅雨入りもまもなくでしょうか。気温湿度など不順な季節を元気に過ごしましょう!また。  asako  2022・6.11

本にもなった「ヨーガンレールの
社員食堂」も、この建物のどこか・・・

ジャクリーヌさんのクッション

    「モネの庭」

庭の柏葉アジサイも日ごとに花房が大きくなっています。
完成したガラス戸の上に飾る布カバー
とジャクリーヌさんの額絵。

鯉の泳ぐ小川にて

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