18日(日)朝からオシャレなマルシェに出かけます。毎月1回開かれるのは、左京区にある「旧関西日仏学館」、数年前から「アンスティチュ・フランセ関西となり、そして今年4月、また馴染みのある旧名にもどりました。東大路通りを北へ上がっていくバスに乗り、「京大正門前」下車。停留所のほとんど前にあるのが、1927年に設立されたフランス政府公式の文化センターです。フランス語講座や講演会・セミナーなどが開かれ、図書室やレストランもあります。二階建ての洋館建築は異国の雰囲気が漂い緑に囲まれていて、トリコロール(三色)のフランス国旗も風にはためき絵のような館です。
いつもは静かな芝生のガーデンにマルシェの立つ日は賑わいます。パン屋さんが4軒?焼き菓子屋さんが2軒?ワイン・コーヒー豆・ハチミツ・花屋・ヨーロッパのアンティーク・アクセサリー・ハーブ石鹸・クレープ屋さんもあったでしょうか。小さなテントがおよそ30~40?目移りしそうなマルシェです。
私の目的一番は「アルガンオイル」。ぐるっとまわっているとありました。2020年3月、コロナ禍に突入する寸前に旅したモロッコで出会った、アルガンの実を抽出してつくられる無農薬オイル。いつもLコープのカタログから注文しているのですが、ダイレクトに求められればなお嬉しい。オイルの瓶が並べられているテーブルに、映画のチラシが置かれています。「青いカフタンの仕立て屋」。手に取っていると、小柄な女性が「これはモロッコのひとたちが作った映画で良いですよと」と言われます。ご主人がモロッコの方とか、私が古都フェズに行ったことを話すと、「まあ、フェズから一時間のところにある大学に行っていました」って奇遇ですね。フェズの混沌とした魅力的なスーク(市場)を思い出します。
パン屋さんもどこにしようかと迷うほど。東山三条にある「ヴィンセントさんのお店」のカンパーニュが美味しそう。愛想のいいクレモンさんのお店番も人気のひとつかも知れません。ヨーロッパの雑貨屋さんでは花柄のコップを!以前、モンマルトルの丘を里美さんと散歩していて見つけたコップと同じメーカー?デンマーク製のベークライトだと店主さんが教えてくれました。ガラスでもプラスチックでもなく割れる心配がないので、歯磨き用に重宝しています。
ガーデンには片隅に舞台も設営されシャンソンの軽やかな歌声やチェロの演奏も聴きながら、テーブル席でワインやコーヒーでくつろぐ人たちもいます。会館内のロビーで古本市を覗くと、クロスステッチの可愛い本を見つけました。HOW MUCH?英語で尋ねてしまうと「ドゥソン・・・」あァ200円と思い500円玉を出しますと、300円返ってきたので正解。マルシェって楽しいなとそろそろ帰ろうと思っていると、入口わきで人だかり。なんともパリっぽいイラストがあしらわれたTシャツやバッグのお店です。VIRUXINYさんはイラストレーター?私はTシャツとあわせてディスプレーされているトロンとした素材のパンツに惹かれました。黒と白の潔いストライプ。もちろんゲット。この夏が楽しくなりそうな予感がします。京都一、オシャレなマルシェに大満足の日曜日でした。

(この日は無料でしたが、7月はパリ祭でもあり有料かも・・)

レッスンのあと、いつもは日帰りですが、この日は土曜日に所用があり一泊するので、金曜日は20時まで開場している東京都美術館へ「マティス展」鑑賞に出かけます。松戸へ帰られるYさんと日比谷線の上野駅でお別れし、何十年ぶりかの上野駅をさまよいます。本屋さんや雑貨店も興味深くすごして外に出ると、いきなりの豪雨。線状降水帯とはこのようなものかと、はじめての出会いに驚きました。
ビショビショになりながら、駅近くと思い込んで行くと、そこは「国立西洋美術館」、ああそうだった、大昔に訪れたっきりの上野です。横殴りの雨に打たれながら、小川となった広場を横切り、水がくるぶしまで流れこめば濡れることに、こだわりって無くなるものですね。ネットで予約したチケットですから、雨に負けて引き返すわけにもいかず、たどり着いた動物園横のミュージアムは、金曜日の宵をアートと過ごすひとたちが結構いらっしゃいました。
画家アンリ・マティスはフランスで1869年に生まれ法律家をめざし、資格をとって法律事務所に勤めていました。その後、画家への転向を決意してパリの国立美術学校、エコール・デ・ボザールを受験するも入学には至りません。にもかかわらず、熱意を評価した教官ギュスターヴ・モローから指導を受けることができました。セザンヌ・ゴーギャン・ゴッホなど後期印象派の影響を受けながら、次第に幾何学的な構成による抽象的な絵画へと移行。
4月30日(日)付けA新聞の全面広告となった「赤の大きな室内」はカラー版でしたから、その赤に誘われて思わずネット予約をしたのです。17:00からのチケットで入場すると、初期のころの油彩は写実的で小さめのものも多く、どれも素敵!会場を巡りながら、どんどん抽象的になっていく過程も興味深い。そしてついに「赤い部屋」の前に立ちました。146×97cmながら迫力のある画面に、誰もが魅せられています。マティスを代表するといっても過言ではありません。ピカソが妬んだと言われるほどの才能に心を掴まれてしまいました。
彫刻も美しくシンプルなラインにパワーを感じます。巨大な「背中」という連作もど迫力。女性の後ろ姿を長方形のフォルムで表現し、どんどん細部が削られていくプロセスも感動しました。
晩年、体力の衰えによりマティスは絵筆からハサミによる切り絵に制作方法を切り替えて、作品を生み出していくのです。最晩年、南仏ヴァンスのドミニコ会修道院、ロザリオ礼拝堂の内装デザインを手がけ、切り紙をモチーフとしたステンドグラスなどは、20世紀キリスト教美術の代表作とされています。映像で見せてくれる礼拝堂では、置かれた大ぶりのキャンドルに光が注ぎ、ステンドグラスの黄色や紫が、それぞれのキャンドルに映りとられて、それは美しいものでした。
1954年84歳で逝去された誰も真似のできないマティスの世界。どしゃ降りの雨に濡れた衣服や心が温かくなり、いつのまにか乾いていきました。小ぶりになった薄暮の上野の森を歩きながら、またいつか観たい企画のあるときに来ようと、マティスにパワーをいただいたのでしょうか、豪雨にめげない私でした。

6月雑感

6月2日(金)、レッスンのため上京、この日は大雨注意報が出ていて、新幹線はいかがかと不安に思いながら京都駅に行きましたが、運行に支障はなく無事乗車。5月は休みでしたから東京クラスの皆さんと久しぶりに「ランチの会」の日です。
4月に立ち寄り、これは良さそうと決めた日本橋・三越の別館地階にある、「フォートナム&メイスン」のカフェレストランに11時半集合。Yさんが早めに来店して席を確保していてくださいました。2人欠席で9人がオーダーしたのは、イギリスらしいサンドウィッチとミニケーキつきセットなど。
コロナ禍以前は会場のあった南青山周辺のオシャレなお店でよく集いましたが、遠征してのランチは、世の中の流れがすこし良くなったからかも知れません。食後いったん解散して、ふたたび六本木にある今年からの会場に集合。銀座線と日比谷線を乗り継げば30分足らずの移動です。前橋や茨城から来られる方もいて、私もふくめ非日常の佳き気分転換となりました。
2023年夏の新作と、皆さん取りかかっている春もののサンプルを事前に宅配便で送っていたので、試着したり写真に撮ったり賑やかなレッスン時間となりました。3月から始めたタペストリーも完成し、感想の言葉にその写真を添えたプリントも配布。年6回と回数を減らしましたが、メールやお電話でコミニュケーションをとりながら、レッスン月を楽しみにしている東京クラスの皆さんです。
また7月に!

手描きの黒板

19日(月)午後、モロッコ映画を観に出かけます。この日しか時間がとれず、連日の外出です。チラシに書かれていたのは烏丸姉小路の新風館地階にあるUPLINK。コロナ禍で映画をずっと観ていませんが、マルシェに出かけたおかげできっかけができたのです。知ってはいましたが初めての映画館はとってもオシャレ、烏丸四条にある「京都シネマ」によく行ってたけれど、これも新しい出会いとなりました。「青いカフタン・・・」は、海岸沿いの古都サヘを舞台に、二代目の仕立て屋主人と病弱な奥さん、そして若い職人の三人が主役。光沢のあるブルーの絹地が裁断され、金糸を撚り合わせたブレードが細かな手仕事により、刺繍や飾りをほどこされていく過程と物語が重なって哀しく美しい映画でした。
映画を観て帰宅すると、ポストに市川里美さんの新作がBL出版より送られて来ていました。さっそくひと息に読んで「エジプトのお話良かったわよ」と電話をすると、「ピラミッドやスフインクスのことって日本のひとに馴染みがないから、どうかと思っていたのでいたので嬉しい!」とのこと。
ひとしきりエジプトのことで盛り上がり、「ぜひ行くといい」と、前から言われていることですが再プッシュされました。そしてこの間、モロッコとフランクフルトに行ってきたようです。フランス文化センターのお仕事でしょう。そこで「昨日モロッコの映画を観たの」というと、「私も観た」ってなんという偶然。里美さんはモロッコで現地の人たちから聞いたそう。まるでご近所さんと井戸端会議をしているようでした。世界は狭いわね。「それにしてもプーチンは罪深い」と里美さん。早く戦争が終わるようにと言いあって電話を終えました。

クレモンさんとパンたち

ALMAのアルガンオイルとバラ水

右上の棚にベークライトの花柄カップ

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赤の大きな室内

ワイン片手にシャンソンを聴く

いつの間にか庭の片隅に
大好きなアガパンサスが咲いていました。
来年も咲いてくれますように。

東本願寺
山科別院 境内にて

『ぼくのともだち ガムーサ』
  市川里美 著 BL出版

もう6月も下旬、半年が過ぎ去ろうとしています。梅雨らしい日々ですね。
京都では祇園祭に関連する記事が多くなりました。あっという間に夏。
お元気でお過ごしください。  2023・6・24  asako

優しいイラストレーター VIRUXINYさん