フンデルト・ヴアッサーのアートを堪能したあと、O先生がドナウ川だという流れに逆らい上流へ向かって川沿いの遊歩道を歩きます。「川幅が狭いから流れが急だね」「そうね?」とわたし。(実際はドナウカナル、本流から分かれた運河) マガモがいる!ユリカモメも!バードウオッチングをしながら、ランチはここと決めた王宮内の温室レストランを目指して、広場にやってきた市電に乗ります。ところが思っている方向に進まず、しばらく走ったところで「これはあかん」と下車。地図を持った老夫婦に道を尋ねると、なんとニューヨークからのツーリスト。お互いに不安なまま「あっちじゃないか?」と言う方に歩き始めたけれど、地図女のわたしには合点がいかず時間もなくなることもあり、街角に停まっていたタクシーに乗りこみガイドブックの写真と住所を示すと「Ok」とやっぱり反対方向に発車。しかし朝出てきたホテルの前をとおりすぎ(これも不思議な方向感覚)、それなら近いわと思うのにズンズン、ズンズン走って、かなりの距離。ウィーンのいわゆるリンクを出てしまうのではないかと「おじさん、ちょっと違うわよ?」と再び住所を示すと「あァ」と勘違いに気づきUターン。ホーンブルク宮殿なのに、シェーンブルン宮殿に向かってしまったのです。もちろん料金は引いてくれたけれど本当にウイーンっ子? ランチの時間もだいぶ過ぎ、小走りで温室へ。わーっ、でも素敵。横長の温室の真ん中を仕切ってレストランにしてあるから、左右にあるガラスの向こうにジャングル。蝶々も飛んでいます。それこそウイーンっ子たちもやって来て、オフィスの延長のようなランチタイムが周りを取り囲みます。外は寒いのに温室の植物たちの気もちが分かる温かさ。「パルメンハウス」はお勧め。
王宮は果てしなく広大で今回は見てまわる時間なし。観光客の群がる広場には馬車の行列。ハプスブルグ家の偉容をここでも感じながら市電に乗って、AMコンチエルトハウス HOTEL へ戻り、バゲージを受け取り、列車に乗るため地下鉄でウエスト・バーンフォフ(西駅)へ。フランクフルト行きの特急で2時間。懐かしいRINZへ行くのです。

ウイーン〜リンツ

冬の旅 U

それにしても20年前、このウイーン西駅での出来事はドラマチックすぎて、この場で書く余裕がありませんが、たったひと晩、数時間ホテルで寝ただけででスルーしたリンツも気になる街です。ドイツのパッサウからオーストリアのリンツまでのドナウ河クルーズはユーレイル・パスで乗れるので7カ国を巡る夏の旅の途中、プランに入れました。ところが恒常的な列車の遅れで船着き場に着いた時には船は出た後。パッサウに泊まって翌日再挑戦するか(それも午後遅く)、諦めて、ハンガリーのブタペストに向かう為、ウイーンに行ってしまうか・・・。即座の思案で船を次の駅?までタクシーで追いかけます。ドイツのマルクはもういらないからと殆ど使ってしまい、友人と合わせても僅か。はらはら、どきどきしながら乗るはずだった船を追い越し先回り。「有り金全部、ちょっと不足でごめんなさい」と運転手さんに謝って、税関職員の居る国境の船着き場で間に合いセーフ。現金もなく、船のビュッフェではカード払い。

でも7月下旬、白夜のドナウ河は夕方でも明るく、緑に繁る樹々は枝を揺らして輝き、川岸を並走する自転車に乗る人たちと手を振り合う楽しさ。ところがリンツに着いたときは真っ暗になっていたから、もう10時は過ぎていたのでしょう。船着き場は人気なく、両替もできず、重いザックを背負って、リンツ駅まで市電やバスにも乗れず、30分くらい歩くのです。駅で両替したときには力つき、タクシーの運転手さんに会社経由でとってもらったネオンの見えるホテルまで歩くこともできず、タクシーで送ってもらいました。
今、そのリンツに再び到着。翌日のプラハ行きのチケットを買いに行っている間二人は両替に行くと言っていたのに、予約したホテルまでの道をインフォメーションで尋ねてくれていました。予想外の手際よさに感激。ずっこけ三人組みのチームワークが整いはじめました。
地図では見ていたけれど、実際は市電に乗って5つ目とか。ドナウの近くに取ったのだから、やはり20年前、市電の5つ分歩いたのです。三位一体像のある広場で下車すると、まだ大きなクリスマスツリーがイルミネーションをまといチカチカ! ホテルWOLFINGERは広場に面していてすぐのところ。フロントは二階にあり到着を告げると、合点とばかりに若いおばさんは階段を下り、両手にバゲージでタッタタと持って上がってくれました。ものすごくアンチックなホテルです。二階から五階まで乗るエレベーターは三人で満員。各部屋ごとに趣きの異なる家具が置かれ、なにげなくキイを分けたけれど、それぞれぴったりの調度。
さあ、デイナーに出かけましょう。雪はときおり舞う程度。20年前に着いた橋のたもとから行ってみたかった向こう岸を眺めます。橋の中ほどに天使が・・・。長ーいラッパをドナウ河に向かって吹いています。可愛い!このとき、次のタペストリーは「天使」と決めました。
船着き場に大きな船、船上レストランでしょうか。ザクザク雪を踏みしめながらドアを開けると「申し訳ないけどプライベートシップなのです」と言う返事。残念、でも素敵なホテルのような船でした。広場の方へ戻って、チャイニーズレストランで乾杯したのです。       つづく

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2011・1・2

カフェレストラン
   パルメンハウス

ハウプト広場

ランチのテリーヌ
左はイチジクの上にほうずき

前日ウイーンについたとき、ミッテ駅で乗車券を買い、指定席券は必要?と聞いたら「いらない」と言われたので、全く20年前の面影の無いモダンにリメイクされた吹きぬけコンコースにある洒落たオープンカフェでくつろいでいたら、いつのまにか列車は入線していて慌てます。2等車に飛び乗り、空いている席を見つけて荷物を棚に。二人はトイレやらどこへやら。するとチケットを持った女性たち。ああーそうだ忘れていた。座席の上にリザーブの表示のあるところには座ってはいけないのです。確かにWIEN−FRANKFURTとあります。「SORRY」ひとりで棚から荷物を降ろしたりコート類を集めたり・・・。汗をかいているところへホソカワが戻ってくれてほっ。O先生はとふと見ると、すでに素足にスリッパ。ズボンのポケットに両手を突っ込んで現れ「先生!くつろぎすぎ!」とホソカワに言われてしまいました。それから大急ぎ三人で隣の車両へ。今度はリザーブか否かを確かめ、RINZ-FRANKFURTと表示されているシートに。これはウイーン、リンツ間は空席ということでしょう。ようやく出発のドタバタが落ち着き列車は夕暮れのウイーンから西へ向かって走り出します。インスブルックもここから数時間。チロルのような可愛い家が低い丘のあちこちに点在。雪の積もった夕暮れ風景は、バクバクした心を静めてくれました。


橋の上の天使