晩夏の旅、などとタイトルを付けたのに、9条の会のことであれこれしているうちにもう秋本番、もくせいも香りはじめ、すこし慌てて旅を進めます。8月31日(水)、この日は唯一の終日自由行動日。朝の光の中をザグレブ駅へと寄り道しながら歩き、前夜マスミさんから教えてもらった駅裏のバスセンターとやらへ。ザグレブ駅は21年前、ハンガリーのブタペストから列車で国境を越えて辿り着いた日のことを思い出します。ホームをくぐって裏側に出て、持っているメモに書いてある目当ての村SAMOBORを尋ねても、幾つかあるバス停の運転手さんは首を振るばかり。再び表玄関に出るため地下道を行くと、洒落たショッピングセンターになっていて、時の経過を感じました。トラムの停留所で出会った運転手さんに聞くと、「この道をまっすぐ行って、右に曲がるとバスセンターがあるよ」とのこと。大きな郵便局に沿い、操車場のアートな壁面を眺めながら200m。ガード下の向こうにあった!確かにここも駅裏。遠距離バスの発着場らしく、尋ねながら路線番号を探します。空港から来た時と、前日に何度も行き来したリシンスキーホールの前を通り、バスは右手に折れて西へ向かうようです。30分ほどでハイウエーの分岐点に来たと思ったら、右手は「リュブリアナ」の表示。隣国スロヴェニアの首都です。目的の村がどこにあるかも調べずに、ザグレブから車で30分、というコメントだけが頼りの心細い道中でしたが、ようやく方向と位置が確認できました。乗り降りの時間を入れて40分で到着。なんと、ザグレブのバスセンターより新しくきれいな所です。遠くに山も見えます。案内所もなく、教会の尖塔が見えるから村の中心は多分あちらの方。行きあたりばったりのアサコトラベル ドットコムに文句ひとつ言わずついて来てくれる佐竹さん。お目当ての美味しいケーキが食べられるのもあと少し。そう、たった一日の大切な日に目指したのは、「フィガロ」の旅本で見つけたクロアチアを代表するほどというケーキだったのです。

晩夏の旅 V

バス通りをそれると、きれいな庭のある別荘のようなたたずまいの家々。花が咲き乱れています。細い石畳の道、小じんまりとした市場を抜けると突然、絵のような広場。車の入らない明るい広場を囲むように、ぐるっとお店やレストランが並んでいます。そしてカフェ「U p r o l a z u」のスイーツ!!赤いストライプ柄の椅子が置いてある店内もいいけど、抜けるような青空の日には、外の大きなパラソルの下でしょう。生クリームののったアイスカフェと、「サモボルスケ・クレムシュニテ」。今日のランチはこれで良い、と思うほどのボリュームですが、甘くなくうすーいパイ皮のサクッと感、クリームの絶妙さ。「うーん、来て良かったね」と、大満足の二人です。ハンギングの花がこぼれるように飾られたショップたち、インフォーメーションでMAPをもらって、この村が有名なのだと、ようやく気づきます。街並みのはずれに小さな手づくりの店。ミシンがあり、ふたりの子どもたちがいて、きれいなママの創った作品が誇らしげです。今や日本には無くなってしまった、アーチストが最初に夢みる空間。親しみが湧き、写真を撮らせてもらい、ネームカードを交換。そして黒いドレスに合わせるチョーカー(ピタッとした首飾り)を忘れてきたので、注文してみます。希望のデザインは了解してもらえたけれど、「黒の細いリボンが家のアトリエにあるから取ってきます。すぐ近くだから30分後にまた来てください」。店の裏を流れる川を渡り、高い木立の公園に分け入ります。ずっと登ると城跡?村民の散策道らしく、のどかな昼さがりです。ベンチに座って風に吹かれていると、店番をしていたはずの二人が自転車でやってきます。お母さんが戻ったという合い図でしょう。子どもたちはまだ英語を習っていないのか、恥ずかしがりやさんのようです。希望どうりのチョーカーが出来あがり、可愛い親子との出会いも嬉しいものでした。後日、旅から戻ると、すでにリデイアさんからメールが届いていて、わたしのブログを見たら、花が好きそうだからと、自分の家でのシーンや、窓から見える教会の尖塔写真を添付してありました。その数日後には、あのケーキの写真!ブログに使わせていただく許可もいただいたのでご覧ください。教会のたもとにSCHOOLと表示があり昔の寺子屋でしょうか。のんびりと時間制限のない散歩に少し疲れて、バスセンターまでは市場近くに停まっていたタクシーに乗ったら結構な距離でした。ザグレブに戻り、ホテルでひと息ついてからトラムに大活躍してもらって、聖マルコ教会近くのナイーフアートミュージアムで大好きな「イワン・ラブジン」さんの絵を見たり、ケーブルカー(世界一短いという)でイリツィア通りに戻り、着いた夜にウインドウショッピングで気になっていた靴(sale!)を買ったり、工芸博物館(ここは必見)の最上階から街を見渡したり、ザグレブ駅の西に広がるボタニカルガーデン(植物園)に到着したときはもう夕暮れも迫り、垣根越しに何やら折鶴の下がった桜の木が気になった佐竹さんは、笛を吹いて退園を告げる係りの方に「あと5分、お願い」と頼み込んで猛ダッシュ。サダコの桜と看板にあり、広島から贈られた記念樹のようです。郊外へ向かう列車が森の向こうで警笛を鳴らし、仕事帰りの人々が家路を急ぐ時間。デイナーは再び魚料理のレストランで、エビのパスタとタコとポテトのグリルをオーダーして、ザグレブの夜は更けてゆきました。ユーゴを解体させた戦争を経て、わたしのザグレブは見事に復興をとげたように思えました。花が咲き、美しい装いの人々が楽しげに街に溢れ、トラムが行き交うのんびりとした風景に出会いに、またいつか出かけてみたいものです。

ウ プロラズの外観

これが
サモボルスケ
クレムシュニテ

L i d i j a さんと子どもたち

 橋の向こうに昔の学校と教会

リデイアさんがメールで送ってくれた二枚の写真

広場の裏側 
川が流れている

建物の下の通路から広場を見る

教会の壁面

ザグレブ駅から見た夕景

店内

公園の木立