アナベルが咲くガーデン

極上のバカンス Ⅱ

野外ミュージアムや北方民族博物館のあるユールゴーデン島は、グランドホテルからすぐの橋を渡った所にあります。今回初めてシュッデは岬を意味すると知り、ヴァルデマー岬にある生涯独身だった貴族ユーゲン公の館(ミュージアム)というわけです。車から降り、冬には凍る小さな入り江の道を歩くと、林に囲まれた坂道の上に黄色い可愛いお屋敷が見えてきます。20数年前、初めて美代子さんに連れて来ていただいてから、いつも訪れるお気に入りとなったミュージアム。1階は居室をそのままにして画家でもあったプリンスの絵が飾られています。何が素敵って窓の外には往来する船が見え、窓辺やテーブルには、いつも感心するほど季節の花たちが惜しげもなくアレンジメントされているのです。ガーデナーもいて温室もあるからでしょう。上の階ではアーティストの作品が展示されています。この夏は明るい色調の油絵と彫刻のコラボレーションが3階で、2階ではモダンな織物を観ることが出来ました。なんといってもこのミュージアムの最大の魅力は1階にあるカフェテリア。こじんまりとしているけれど古いキッチンをそのままにしているあたたかい雰囲気で、大きなボウルにたっぷりのスープと自由に選択出来るパン、それだけで充分です。私が仕事に疲れたときに、ふと思い出す『行ってみたい場所NO1!』。 特に冬場はみんな厚着をしていて、日曜などは押しくらまんじゅう状態ですが、居心地の良い場所は誰にとっても同じということ? この日は少々小雨、ランチのあとアナベルの咲く庭やリンゴも色づく果樹園などを散策しながら、エイナさんの車を待ちました。実はこのたび初見、岬の突端にあるティールスカ・ミュージアムへ先に送っていただいたのですが、オープンが12時からと知り11時オープンのユーゲン邸に戻りました。それが思いがけず難儀をして、この島はストックホルム中心部に近いこともあり、豪邸が多く一方通行や行き止まりに阻まれたので、ロングドライブとなり、おかげで見たこともない広大な緑地や森に出会うことが出来て感嘆!森の向こうにテレビ塔が見えるのに信じられない光景です。人影の無いこれほどの自然に囲まれるために、日本では何時間も遠くへ行かねばならないでしょう。

敷地内の貴族の館

26日(火) グランドストックホルムホテルの2Fにあるレストランで朝食。前日、通りから見上げて綺麗なプランターが並んでいると思っていた窓辺での時間は、ロケーション・サービス・美味しさ全てがやはり五つ星。10時、美代子さんがロビーでピックアップしてくれて、車で待っていてくれたエイナさんと合流。最初はこの日もひとりでミュージアムを幾つか見て、街を歩いて夕方列車でウプサラに戻るつもりでした。思い描いたプランをメールしたあと、美代子さんから返信があり「ストックホルムに用事があるので一緒にブァルデマーシュッデへ行きましょう。そしてもう一つ、20年前に行った素敵なミュージアムがあるからそこにも・・」と嬉しい申し出に内心ほっとしていました。旅先でひとり食事の連続は近年苦手なものとなりつつあるし、大好きな「プリンス・ユーゲン」のミュージアムから、水辺沿いの散歩も趣きがあるにちがいありません。エイナさんも、67歳で定年を迎えるまで勤めていた会社に出かけるから「車で帰りましょう」となって、無理やりお仕事を作ってくださったのだと確信していますが、独りぼっちにさせない作戦に喜びました。

ところでティールスカ邸は戦前まで裕福な銀行家の持ち物でした。破産後、国が管理していたから収蔵されていた大量の!ムンクやゴーギャン、ドガそして19世紀に活躍したスエーデンの画家カール・ラーションなど、著名な画家たちの絵画や工芸品が状態も良く保存されています。最近リニューアルされて、以前は未公開だったという屋根裏にあたる3Fも、東に向いた森の見える窓は窓枠が赤、西側の水辺が見える窓は白い窓枠が印象的でした。ここにも2Fにカフェテリア。洒落た小部屋にテーブルが配置され、並べられたクッキーやケーキのどれも美味しそうなこと。それもそのはず、美代子さんが教えてくれたのは、コーヒーや紅茶などの注文を受けている痩身の美しい方がパティシエで、TVの料理番組にも出演されているとのこと。うーむ、これは次回から必見の館となりそうです。雨模様の一日、水辺の散歩には不向きでしたからエイナさんの送り迎えは感謝です。ゆっくりと至福のミュージアムタイムを過ごしたあと、美代子さん御用達の日本食品を扱うお店まで市内観光のように回り、夕刻のラッシュの始まったストックホルムを脱出。幹線道路E4はアーランダ空港脇を通って1時間でウプサラへ。この道を中央駅近くの、私もかって訪れたことのある近代的なオフィスと毎日(もちろん休日、休暇を除いて)25年間往復していたエイナさんに脱帽。そしてやはり心配だったと言いながら支えつづけた美代子さんにも敬服。
さあ、明日はいよいよサマーハウスのあるダーラナ地方へのドライブです。  

つづきますが、ただ今タペストリー「西安」の制作などがあり、間が空きます。悪しからず。 
asako 2014・9・18

ティールスカ・ミュージアム

グランドホテル
左新館 右旧館

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↑3F

優しい花たちの温室

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ユーゲン公邸の居間

↓2F