1月2日(月) AF291便は機体整備に時間が掛かり40分遅れで12:30にテイクオフ。乗って間もなく右隣の(私は通路側)フランス婦人が日本語を話されることが判明。ご主人が日本の方で、二週間滞在していたけれど、用事があるので一人で帰るところのよう。思わず話が弾んだのは、ご主人の故郷が鳥取で、山陰地方も良く旅をするとのことから、パッチワークが趣味というので「出雲キルト美術館」のお話しをすると、「ぜひ行きたい」とものすごく意欲的。近くの「出雲民芸館」には行ったことがあって素敵だったと言われるのですから、昨年の春に訪れた民芸館が想い出されました。それだけでなく、「江戸時代のカソリック美術」を研究していて仙台にも出かけ、伊達政宗と支倉常長のお話も、以前セビリアへ出かけた折に聞いたことがあり、フランスの方が研究!と驚嘆。このたびは安土へも行って、ひとりで安土城の遺跡のある山に登って来たって、私は琵琶湖線から眺めるだけなのに・・・。
往路はこのように盛り上がり、ところでパリのどちらにお住まい?と尋ねると「パリではなくてオルレアン」。思わず「えっオルレアン?」というのは、今回はパリからどこか行っていないイルドフランスの街を訪ねたく、里美さんにもその旨を伝えており、候補の一つがオルレアンだったのです。思わず「ロアール川沿いの?行きたかったところです」というと「どうぞいらっしゃい!」。こんな偶然ってあるのでしょうか。「泊めてもらう友人と相談してご連絡します」。
シャルル・ド・ゴール空港に着いてからもタクシー乗り場までご一緒してくれて、とても優しいシルビーさんです。その後無事モンマルトルの丘の上にある里美さんのアパルトマンに着きました。夕方6時、すっかり日は暮れてフランス窓の向こうに、夢にまで見たサクレクール寺院の裏に広がるパリの夕景が望めます。先ずはお土産、「赤いカーディガン」はいかがでしょう。「わあ!素敵!綺麗な赤!」と大興奮。袖丈もピッタリ。気に入ってくれて良かった。用意してくれていたディナーをいただき、長かった新年2日の夜は更けてゆきました。
1月3日(火)、この日は予定もないので持参した編みものをしていると、「午後からサンジェルマンに行かない?」と里美さん。えっ行きたいけれどこれから3日間あちこち出かけるので、申し訳ない気分。アサコが来るなら二人で見ておいて・・・と、カトリーヌさんからのアドバイスがあったそう。そんなわけで私としては思いがけなく幸せな里美さんとのパリ散歩です。
モンマルトルの丘をメトロ・アベッセ側から登って来た人たちとすれ違いながら丘を下ります。バス停までの途中、ウズベキスタンのテキスタイル・ショップへ。アパルトマンから5・6分なのに、里美さんも知らなかったお店です。
シンプルなストライプ柄でクッションやテーブルクロスなどインテリアものが飾られている中に、コレクションをしている ♥ ものを見つけました。コチニールという天然染料で染めたウール地はえんじ色。そしてレインボーカラーのタッセル付きです。お買い上げ!
観光客のいない裏道を歩いてバス停着。95番でグネグネ曲がりながらサンジェルマン・デ・プレまで行くそうです。サンラザール駅の脇を通り、ギャラリー・ラファイエットとプランタンの二つのデパート!懐かしい。初めてパリに着いたときのホテルがサンラザールにあったので良く歩いたところです。その頃は見るもの全てがお洒落で、さっそくテレンとした素材の花柄スカートを買い求めたことを思い出します。この頃は着るもので欲しいと思うようなものに出会えないのが本当に残念。

オペラ座の前も通ります。ルーブル美術館のガラスのピラミッドを眺めながらセーヌ川を渡り左岸へ。まるで観光バス。美術学校のある通りから抜け出ると、そこがサンジェルマン。デ・プレ教会がそびえています。カトリーヌさんの教えてくれたのはJACOB通りのニットのお店、二人ともそんなお店が出来たのね、と語りながら探すのですが、言われた番地に見つかりません。

カフェ・ド・フロールのギャルソン

ここから丘を登って帰ろうとする里美さんに、ケーブルカーを提案。「えっ、こんなの乗ったことない」と短い距離なのに観光客で満員の車内でビックリしています。「たまには楽をすることも必要よ」と、昨年12月に絵本展のお仕事で出かけたツールーズの暗闇で大きな穴に落ちてしまい、お尻を強く打ったという里美さんに体を気遣うことをアドバイス。おかげで疲れず登り、サクレクール寺院の正面から薄闇のパリ市内を俯瞰し、明かりの灯り始めたアパルトマンを撮影できたのです。  つづく

1月3日
朝の窓辺

とっても気に入ってくれたカーディガン
コレクションである世界各地から集めた
赤い布にかこまれて・・

薄暮のパリ

冬空のパリ Ⅰ

モンマルトルの丘から
メトロ・アベッセへ
下りる途中の広場

バスの窓からセーヌ川を渡りながら・・・

JACOB通りは私も最初にパリに来たとき、雑誌に書かれていたブティックを探した想い出の通りです。たどり着いたとき、ドアは閉まっていてランチタイムでクローズ中。とっても残念でしたけれど、数年経ち自分でショップを開くときに参考にして、8月の夏休み共々採用させてもらいました。人手が余るような店でなければ、自らのオフの時間を確保することは大切なことだと学んだからです。
里美さんは「最初の出版社がここだったのよ」と教えてくれて、彼女もご縁のある通りであり、趣のあるフチホテルなどを数軒案内してくれました。数年だけカトリーヌさんも通りのはずれにJACOB店を出していたので行ってみると、なんとも雰囲気のないお店となっていました。オーナーの醸し出すものは得難いものなのです。
陶磁器の「GIEN(ジアン)」に入ります。高級磁器は眺めるだけで、お目当てはオリジナルのペーパーナフキン。生徒の皆さんへのお土産です。日本では見かけないものに出会えて嬉しい。
もう一度番地を確かめながら歩くと、そこはクローズしているギャラリー。薄暗い店内を覗くとなにやらニットのオブジェのようなものが飾られています。お店でなく展示会だったのですね。二人で納得してお茶にします。
デ・プレ教会に面してサルトルやヴォーボワールが集ったという有名な「カフェ・ド・マーゴ」がありますが、1ブロック西の「カフェ・ド・フロール」へ。何十年ぶりでしょう。それも里美さんと一緒なんて・・・。ピスタチオのアイスミルクをオーダーし、半分は観光客だけど、パリのお洒落な常連さんもいて、いつまでも暖かい店内から出たくないほどでした。
またモンマルトルまで1本のバスで帰れるよう、今度はサン・ミッシェル通りに向かって寄り道をしながら歩きます。サンジェルマン大通りは見事な貴族の館であったアパルトマンが延々とつづき、枯れ枝の並木とグレーの空に見とれて「冬のパリ」を撮り続けてしまいます。バスは来たときより南東側を北へ向かい、サクレクール寺院の下あたりで下車。行きたかったボタン屋さんを目指したのですが閉まっていて、まだ冬休みのようでした。

昨年11月の展示会に、丁度里帰りしていた絵本作家の市川里美さんが観に来てくれて、久しぶりにおしゃべりをしたのですが、その中で「母も歳だし、あなたを頼りにしてるのよ!」と言われ、世界中を飛び回っていそがしくしていると思い、私の方もバタバタの毎日で、しばらく音信不通状態でしたから、直に聞かされたひと言が胸にあたたかく刺さりました。
30歳を過ぎてから渡欧を開始し、いつの間にか2年に一度の割合で訪れるようになったパリ、15回を数えたあたりで回数が不明となっていますが、70歳となった頃から、まだ見ぬ国への好奇心が勝り、もうパリはいいかな?と思うようになっていたのです。足腰の元気なうちに旅をするとなれば、そうゆっくりもしていられません。今年は夏に「アイルランドぐるり一周」を企画しています。しかし久しぶりに出かけて、里美さんともゆっくり語り合いたいですし、ジャクリーヌ・ゴヴァンさんや、「ア・ラ・ボンヌ・ルノメ」のカトリーヌさんにも会いたいものです。
「ラスト・パリ」・・・そう思って冬休みに出かけようと決めたのは師走も近づく頃でした。里美さんの都合を伺えば「どこにも行かないからどうぞ!」とのこと。先ずは展示会で里美さんが気に入ってくれた「天使と幾何柄の赤いカーディガン」の赤は廃番になっているので、糸を二本合わせて、里美さん好みの地模様のカーディガンに取り掛かり、アパルトマンに泊めていただくお礼としたく思います。年末にニッターさんへ依頼していたカーディガンが出来上がってきました。気に入ってくれそうです。
年末の大仕事を片付けながら、ジャクリーヌさんやカトリーヌさんともランデブーの約束をまとめる中で、ジャクリーヌさんのご主人フランクさんが12月7日に亡くなったことを知ります。発症してから4か月とのこと。モネの家のあるジベルニーから車で1時間も田舎道を走ってたどり着く、庭の真ん中にリンゴの樹のある可愛い家。樹の下でのランチも楽しかったゴヴァン邸を想い出しますが、今はパリの娘さん宅にいるとのこと。そのようなときにと思うけれど、「会いたい」と言ってくれるので、細かい打ち合わせはパリに着いてからとします。カトリーヌさんはご主人と、年の初めから孫二人を連れてノルマンディー。5日に帰るから・・・というと6日(土)しかありません。里美さんとヴァンブのノミの市に行こうと決めていたことを知り「一緒に行く!」、今までにない展開です。

花屋さんには早くもクリスマスローズ!

・・・・・・・・・・・・・・・

ジャスミンも・・・

バス停でバスを待ちながら・・・

坂の途中の
有名なパティシェのいるケーキ屋さん

夕焼け間近の
アパルトマン

サンジェルマンの裏通り

朝日の差すキッチン

新年のご挨拶もせぬままにもう23日、みなさま良いお年をお迎えのことと思います。この冬は北極からの大寒波が南下して、北半球の各地を猛烈な吹雪が襲い、つめたい日々がつづいています。東京なども大雪で大混乱の様子。
先日もオランダやフランスで、道行く人々が自転車ごと飛ばされている光景をTVで観ましたね。スキポール空港では300便が欠航というニュースにも驚きです。実は2日からパリへ行ってきたのですが、確かに寒く、といっても京都とさほど変わらぬ冬と思っていたのに、その後急変したのでしょう。

ウズベキスタンのインテリアショップ

パリのアパルトマンで
編みものをする夢時間

サンジェルマン大通り

里美さんのコレクション

例年になく厳冬です。隠れインフルエンザも多いとか、
お体に気をつけてお過ごしください。

2018・1・23  asako