夏の想い出

さて、8月末に念願の「秋田・大曲の花火大会」へ行って来ました。盛岡在住のSさんご夫妻主催による、こじんまりとした12名のツアーです。Sさんとの出会いは、とってもドラマティック。
亡き夫は広告代理店でデザイナーとして勤務の傍ら、山と版画の好きな友人と絵葉書を作り、共通の友人である大原の柴漬け処「志ば久」に置いてもらっていました。なんだか気恥ずかしい思いからでしょうか、手描きによる(京都ご案内)のミニコミ紙を畳んでおまけに付けていました。
あるとき彼らの知り合いの方が、当時人気のあった雑誌「anan」にそのことを投書。それを見て20代の前半から京都への旅を繰り返していた私は、手紙を書いて購読を希望しました。「会社勤めをしながら、沢山の依頼があって困惑している」と書かれた手紙を読んで「あら、迷惑だったのかしら」と思いながらも、『かみひこうき』は以後東京の我が家に届くようになりました。その後、『かみひこうき』に描かれていたあちこちを巡りながら、旅の印象を便りするうちに、「今度京都へ来られたらご案内します」という思いがけない申し出があり、当時大阪に居た友人と連れ立って出会いました。ときを経て結婚をし、京都に暮らすきっかけを作ってくれた「anan」には、以来ずっと感謝をしていたのです。

Sさんとはギャラリー「森の小枝」がご縁を結んでくれました。盛岡でクリニックを開業してられるSさんは京都が大好き!盛岡から日帰りでも来られるってすごくないですか?そのSさんは秋田・大曲近くのご出身で、仙台の高校に寄宿していたときに『かみひこうき』を取り寄せていたとのこと。
後年、友人から「『かみひこうき』の石井さんの奥さんはニットデザイナーみたいよ」と聞いていて、数年前に堺町通リを歩いているときに、私のニットアート展の案内に誘われて『森の小枝』に立ち寄られました。私は不在であったため、芳名録に記名をされて、ご縁も添え書きされていました。それから文通(今はメール)がはじまり、昨年11月「文化博物館」での展示会をご案内すると、はるばる盛岡から来てくださったのです。
初対面とは思えぬ親近感。そして「大曲の花火、興味あります?」と尋ねられ、ずっと不可能なことと考えていたので「ぜひ行きたい!」と即答。それが今回の旅物語となったわけです。

8月25日(土)伊丹発10:25 JAL便で「いわて花巻空港」へ飛び立ったのは、メルボルンへもご一緒した一級建築士のMさん。炎暑をくぐり抜けてきたごほうびのような夏旅です。
11:46花巻着、中学三年生の修学旅行が東北一周で、青森から・酸ヶ湯温泉・十和田湖を経て花巻で鹿(しし)踊りを見学、仙台の青葉城を回った想い出深い修学旅行でした。ちなみに高三の修学旅行は伊勢・吉野・奈良・京都。ですから中三以来の花巻。晩夏の田園風景の中をバスは40分走って盛岡へ。

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☆告知 友人のひとり、元朝日新聞記者・土岐直彦さんが『闘う沖縄 本土の責任』を かもがわ出版から刊行されました。
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     30日には沖縄知事選があります。遠いところのことと思わず、まずは沖縄を知る機会となりますよう手に取って
     一読していただければ幸いです。

虫の声も爽やかに聴こえるころとなり、あっという間に秋が深まりそうです。
いつもアンジュのブログをクリックしていただき、本当にありがとうございます。 
しかしながら、するべき仕事もしたいことも山積み。次回は、またしばらくしてからとさせてください。
季節の変わり目です。ご自愛を。         asako 2018・9・25 

市内へ戻り、材木町で降ろしてもらって三人でぶらぶら。私が数年前、杉綾織りツイードでオーバーコートを作って頂いた、シャネルもご注文のホームスパンショップに寄りました。覚えていてくれたので、そのときのお礼を申し上げ、シャネルスーツにふさわしい布地の陳列に見とれました。
もちろん斜め向かいにある『光原社』は外せません。北上川が見える所まで通り抜けられる敷地内には、諸国の民芸品を扱うショップやカフェ、世界の小ものと衣服の小さなお店や資料館などが木立に隠れるように点在しています。大好きな一角。Sさん、どうしても食べて欲しいと「可否館」で特大のアイスクリームを注文。そこにコーヒーやリキュールをかけていただくのだそう。添えてあるウエハースも嬉しいですね。
夕暮れも間近かな北上川沿いの遊歩道を歩き、最後にご案内してくださったのは「キッピン食堂」。吉浜と書いてキッピン。岩手流の呼び方のよう。ブテイックと間違えそうな外観なのに、奥に長く洒落た店内と、若くてモデルのようなご夫婦がオーナーの、お魚は新鮮で、なにもかもとびっきり美味しいデイナーのお店でした。ご主人も合流、ご夫妻の出会いやお仕事のこと、楽しいお酒と美味しいお食事に4人が弾んだ宵となりました。

もうきりがありません。ここまででお許しください。翌27日(月・午後)、仙台まで新幹線に乗って、ここでも市内を歩き、仙台空港から伊丹へと戻りましたが、災害が無ければ「極上の・・」と名付けたい夏旅でした。
それは何よりSさんご夫妻の暖かい心に包まれてのものでしたが、「『かみひこうき』のお礼です」、とさりげなく言われて、何十年も前のことなのに、小さなミニコミ紙が心の中に留まっていてくれたことに感激です。

先日、お彼岸のお墓に参ったとき、『かみひこうき』のご縁で素敵なSさんご夫妻に出会うことができました、と報告し手を合わせてきたところです。

曲げわっぱには玄米ごはん

大曲・花火大会

岩手に行かねば
出会うことのできない幸の数々

玄武温泉付近

葛根田渓谷の柱状節理

『ぴよんぴよん舎』の冷麺

Sさん撮影、今年のチラシ

盛岡城址公園にて
   8月26日


ラベンダーの向こうに
百日紅

夕暮れの北上川

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川ベリから材木町側へと
つづく細長い敷地

うば百合の咲き終りにトンボ

お彼岸も過ぎて災禍を経た街にも秋の気配が漂いはじめました。このたびの台風は、まわりの方々から見聞きするだけでも、報道以上の細かな被害に遭われたことが分かります。皆さまにはいかがお過ごしでしたか。被害の大小にかかわらず、心よりお見舞い申し上げます。一日おいて北海道で大地震が起こり、本当に何がどこでおきても不思議でないご時勢となりました。予報があれば備えて暮らすことが重要なのですね。
何ごとも自分と無縁と思わず、アンテナを張り巡らせて生きていかねばならないことを心がけましょう。

この2枚はSさん撮影

光原社とは、宮沢賢治が生前唯一出版をした「注文の多い料理店」の
出版を担ったところ。

美味しくワイワイいただいているとき、「今から主人が来ます」えっ?「温泉に行きたいと言われていたから行きましょう」。私たちバスで・・・。「肘折温泉は今閉まっているのでは、玄武温泉がいいですよ」。Mさんと申し訳ない感いっぱいで恐縮。
電話が入ってご主人ご到着。上の橋に停まっていたのは迷彩柄の軽ながらキャンピングカー。スエーデン軍の迷彩柄は直線でさっぱりとしていて、これはやはり医学生である息子さんの趣味だとか。
『くふや』の店主ご夫妻に別れを告げて、いざ西北の山を目指します。小岩井農場の近くを通り、青森との県境にある八幡平に向かう途中とか。
ドライブの間に雨も上がり高原のような葛根田渓谷に着きます。お二人は「ちょっとその辺を走ってきます。1時間後にお迎え!」と走り去り、私たちは渓谷の向こうの山の緑と青空を眺めながら、貸切のような露天風呂で夢の時間。暑いお湯につかった体が心地よい風に吹かれ、酷暑の疲れが消えていくようでした。
この時間、お二人はご主人の趣味であるカメラで撮影を目論んでいられたようですが、また麓から登って来る迷彩カーに?と思っていると、その大事なカメラを忘れてきたようで、探しに市内まで戻っていたとのこと。「良くあることです」と往復1時間ちょっとも気にせず、私たちを「柱状節理」の見えるところまで案内してくれました。
さあ、タクシーを呼んでもらい駅前に戻ります。クリニックを訪れてビックリ!Sさんはなんと院長先生。てっきりご主人のアシスタントをされていると勘違いをしていました。カンカン帽をかぶった男先生が来られ、院内の表示にお名前はあるけれどと訝っていると、「家事手伝いです」ってキュートな方。岩手医大の教授です。他に東京から来られた二組ご友人のカップルがいらして、あと4人の女性たちは遠く萩などからの方もいて駅で待ち合わせとのこと。
男先生の掲げる旗を見失わぬようついて歩き、18時前の「こまち」に乗車。クリニックで「花火大会グッズ」を渡されていて、中には雨天でも良いように簡易レインコートも入っていました。至れり尽くせり、毎年の恒例だからと、くったくないご夫婦ですが、この大曲までの新幹線の切符をゲットするのが一番の肝のようです。ありがたいですね。
19時大曲着。徒歩で会場である結婚式場会館を目指します。ドーン、ドーンと地響きのような花火の打ち上げ音が聞こえ、日本三大花火の一つもすぐに観れると思うとワクワク。
花火見物はいいけれど混雑とトイレが問題と言われますが、二つをクリアできる会場に到着。三階の屋上に設えられたテーブル席はもう満席!目の前で花火が打ちあがっています。なんてきれいでしょう。おおきな容器に盛られたご馳走も用意され、ビールで乾杯!

今年は「金足農高」の準優勝お祝い花火が上がるとのことでしたが、昼花火というまだ明るいうちに上がってしまったようで残念。全国からの花火師による高度な手法の花火も数々上がり、スポンサーつきの花火もアナウンスごとに地元の方々から歓声が聞こえてきます。眼下には浴衣姿などの見物客が、団扇片手にぎっしり満員。暗くて何を食べているのか分からないけれど楽しい!生涯で一番素敵な花火見物であるのは間違いありません。誘ってくださったSさんに大感謝!
21時に2万発が打ち止めとなりましたが、復路の「こまち」は22時半大曲発だから、慌てずゆっくり駅まで戻りました。駅前では毎年繰り返される大混雑を解消しようと、JRの学習のあとが伺える・・・とS夫妻が感想を述べるように、スムーズに列車にたどり着けました。しかし、指定席が埋まってから立ち席の方たちを乗車させるので20分ほど遅れて出発。盛岡着は深夜となり、行列しているタクシー乗り場へ行こうとしたら、目の前に4台がドアーを開けてスタンバイ。ここまでご用意してくれるなんて、添乗員?ご夫妻に大感謝しながらホテルへ戻りました。

開運橋近くにある
『キッピン食堂』の新鮮な魚貝たち。

盛岡・紺屋町「ボンボニエール」

翌26日(日)、朝はゆっくり過ごし、駅までのシャトルバスで市内に向かいます。土曜日のお疲れが出ている休日と思い、無理にご一緒は避けていたのですが、「お昼はぜひ行って欲しいところがあるからご案内します」と、Sさんが言ってくださり申し訳なくも嬉しい。
待ち合わせの『くふや』は「上の橋」のたもと。医大の近くでバスを降り、明治44年に建てられた「岩手銀行本店」のレンガ館をのぞいたり、途中で「肘折温泉」という行先のバスを見つけたので、「午後は日帰り温泉にしようね」と、バスセンターまで行って時刻を確認。城址公園を散策しながら中津川沿いに紺屋町界隈を歩きます。
フランス雑貨の「ボンボニエール」は可愛い!ビンテージもののペーパーナプキンや、黒地に花柄の大判スカーフを見つけてラッキー!
待ち合わせの『くふや』さんはさすが!店内にはアンティックやさんかと見まがうばかりのガラス食器と陶器類。お洒落なご夫婦が居て、ごちそうへの期待も膨らみます。
小雨の中をSさんが来てくださいました。クリニックから車でランチに来たりされる常連さんのようです。わあ!美味しそう。滋養のある体に優しいものばかり、住んでいる人にしか分からないとっておきのお店のようです。Sさん、お腹いっぱいでも欠かせないというデザートの「豆カン」もごちそうになり、ありがとうございました。

『くふや』のランチ

カフェ「愛宕下」ガーデン

  
  遠くに盛岡市街

宇津宮りんご園のジュース

盛岡は何度か来たことがあるけれど、いつも同じところばかりでしたから、Sさんのおススメ処を巡るのが楽しみです。まずはランチに決めていた「ぴょんぴょん舎」。盛岡冷麺発祥のお店は、駅前にあってさすがに行列!でもすぐに店内に入れたと思ったら、二階もあり広くてお洒落!季節限定の「ムール貝のチヂミ」とスイカを添えた冷麺は、さすがに美味しかった。
二階席からはビルの間の吹き抜けの向こうに「静眠堂医院」。Sさんが開業されているクリニックです。ともに立地条件の良い場所ですね。夕方に集合なので、まずは丘の上にあるという「盛岡グランドホテル」へタクシーで向かいます。
大きなお寺の並ぶ一角を横目に愛宕山を登り、森の中の静かなホテルに到着。老舗らしく落ち着いたたたずまい、見晴らしの良い広い客室で2泊の幸せ!
ひと休みののち、Sさんから聞いていたカフェ「愛宕下」へ。南部藩に縁の方が昭和の面影のある住居を開放されていて、ホテルの裏道をさがるとすぐのところ。平屋でどこか懐かしい雰囲気。
南に広がるガーデンもオアシス感がいっぱい。リビングや和室の奥にフローリングの小部屋があり、二人で貸切状態で、しぼりたてのリンゴジュースと小ぶりのアップルケーキをいただきます。腰高の窓辺にはタチアオイが背くらべ。ガーデンの周囲に立ち並ぶ巨木の額縁の向こうには、盛岡の市街が遠望でき、春には桜のお花見も見事でしょう。
定年後にカフェをオープンされているオーナー夫妻のもの静かな接客が雰囲気とぴったり。冬季はクローズするという丘の中腹に広がる隠れ家のような空間です。

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光原社から北上川を・・