パリ郊外にある友人宅のたわわなプラム

PHOTO SATOMI

さて蒸し暑い京都でくりひろげられた祇園祭、鉾の巡行も三年ぶりに復活し、本来の目的である疫病退治にひと役買ってくれたでしょうか。いつもは閑散とした午前中に「ちまき」を求めて出かけるのですが、今年はスケジュールの都合でレッスンを終えてからの鉾町歩きとなりました。それも宵々山でしたから室町界隈の雑踏は数年ぶりです。ようやく四条通というところで「菊水鉾」にたどり着き、カメラを上に向けたとたん「コンチキチン」とお囃子が始まったので、今年の「ちまき御用達どころ」と決まりました。
歩行者天国となった四条通りに出れば、西山が薄赤く染まるなか、月鉾・函谷鉾・長刀鉾と居並ぶ光景は絶景です。夏になったらどこからかコンチキチンと聞こえてくる京都です。ムズムズとお祭りの気配に浮ついてしまうのも仕方ありません。これからまだまだ24日の「還幸祭」、31日の「夏越祭」まで1日からつづく一か月にわたる行事、終わるころには抜けるような青空となっていてほしいものです。気候不順の折、皆さまお体どうぞおいといください。お元気で!   asako 2022・7・19

Chantelivre

2022 盛夏

室町・四条上ル 「菊水鉾」にて

パリ・サンジェルマン大通りに面した児童書専門店
『シャントリーブル』のウインドーで繰り広げられる
里美さんのフェア。友人から写真が送られてきて知ったそう。
なんて可愛いディスプレー!私もパリへ行くたびに通った
大きく品揃え豊富な居心地の良い本屋さんです。
カメラに映り込んだ通りの向かいの古めかしい建物もいいですね。

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気分転換に一冊の絵本をご紹介いたします。パリ在住の絵本作家・市川里美さんの新刊『しっかりママにつかまって!』BL出版。今回はオランウータンのおはなしですが、生息するボルネオ島やスマトラ島では豊かな森の木材を伐り出し、森を焼いてはパーム油脂を作るためにアブラヤシの林にしてしまう人間たちの暴挙により、マレー語で「森の人」とよばれるオランウータンの個体数も減少が加速しています。アマゾンの次はオランウータンのことを描きたいと思っていた里美さんですが、世界中にコロナ禍が蔓延し、旅する絵本作家としての足を奪われてしまいます。そこでパリ・モンマルトルの丘の上にある瀟洒なアパルトマンに居ながらコンピューターでオランウータンのことを学びます。
「ユーチューブはなんでも教えてくれるのよ」。そんなメールが来ていたころ、里美さんはオランウータンの生態に釘付けになり、愛らしい子どもがお母さんを信頼しきった瞳でみつめる姿に感動していたのですね。飛行機に乗って旅できなくても、現代的な情報能力を駆使して画面を観ながらスケッチして???生まれた奇跡の一冊とも言えます。また親子の無償の愛は人間も動物もかわりがありません。ロシアのウクライナ侵攻によって、無理やり親と引き離された子どもたちの叫びと重なり、それは豊かな自然を守ることの尊さと、あってはならぬ戦の犠牲への強い義憤です。絵本に添えられたリーフレットには、2018年4月に、フランス文化学院より派遣されて、当時はキエフと呼ばれていたウクライナ共和国の首都を訪れた里美さん。まさか数年後、戦争に巻き込まれるとは思ってもいなかった穏やかな教室の光景を思い出すたび、あの子たちは今どうしているだろうと胸を痛めています。ぜひお孫さんや、ご自分へのプレゼントに手にとって里美さんからのメッセージを受け取ってください。次作はエジプト。昨年11月、感染者数が落ち着いたころを見計らって旅したエジプトでイメージを膨らませたお話が生まれようとしています。スフィンクスに憧れる牛のお話とのこと、楽しみですね。

あっけないほどの早さで梅雨が終わったと思っていたのに、7月の半ばを過ぎてもまだ前線が居座って、もはや戻り梅雨などと言ってられない不順な気候です。梅雨の無かった北海道も連日雨に覆われ、まさに気候帯が北上しているのですね。コロナ禍も第7波とか、蒸し暑くしのぎにくい日々ですが、皆さまお変わりありませんか。

キーウで開かれたお話の会