グエル公園のグエルさんは繊維会社も持っていて、その工場と社員たちのための村をバルセロナ郊外に建設したのです。そしてご自身の邸宅もガウディに依頼しました。しかし広い敷地にスロープをつけて半地下になるよう礼拝堂を建てるだけで10年もかかり、その間グエルさんは他界され、ガウディは「サグラダファミリア」建設に情熱を傾けてしまって思うようにはかどりません。そこでグエルさんの息子から「ここまでで良い」と言われてしまい中途でストップ。
そのようないわくつきの礼拝堂の素晴らしさ!村人はもちろん、子どもたちにお話を聞かせる場としても考えたようで、丸い窓のステンドグラスは花と十字架と四分の一を開けると蝶の羽になるアイディアがほほえましい。二人掛けのベンチも左右にすこし外側を向いていて、繊細なカーブを描く芸術品でした。
さてこの村で撮影をいたしましょう。レンガ造りの二階建て連棟が四方に伸びて病院もあります。グエルさんの工場で働いていたひとがいかに多かったのかが分かります。道を曲がると広場がありました。車から降ろし担いでいたザックをベンチに置いて、中央の花壇わきでカシャッ!静かなお宅の錬鉄の柵でカシャッ!ペンキの剥げかかったトビラでカシャッ!ここまで来なければ撮れない写真たちとなりました。
さてさて、すこし遅くなりましたが(チーズをいただいていて良かった)カミムラ氏おススメのレストランへ向かいます。バルセロナから南へ下がったところにある海岸べりのリゾート「タラゴサ」方面へコロニアルから約20分。葡萄畑の丘の斜面にあるお洒落なレストラン「CAL BLAY」。広々とした店内の窓からはモンセラットの山も見えます。教会などのあった裏側に回り込んだようです。ワインとイベリコ豚と新鮮なお野菜などと美味しいバゲットで満腹となりました。このレストラン内やお庭でも撮影させていただきました。

バルセロナ Ⅳ

個人的なガイドさんのツアーははじめてですが、地元を熟知している方のご案内ほどくつろげるものはありません。こちらのペースにあわせていただけるのも幸いなことです。さてバルセロナに帰りますが、丘を下りながら葡萄畑でも撮影したく途中下車。スペインの春の光をあびた葡萄畑。オリーブの木の幹にベストを掛けてカシャッ!丈の低いぶどうの冬木と三角ストールでカシャッ!その後お腹もいっぱい、疲れもあったのか、バルセロナの街なかに着くまでひと眠りしてしまいました。
もう夕刻です。ここでカミムラ氏のサイドビジネスであるという「KOKEMON コケモン」へ。コロナ禍で観光客が激減したとき、当時市内では一軒も無かった苔をあつかうお店をオープンされたそうです。苔玉は繊細で、土中のバクテリアを嫌うため、土から剥がしたばかりの苔は一本一本水で洗うなど手間のいるお仕事のようですが、そこは幼いころ編みものが好きだったという器用さが生かされているとのこと。お店はこじんまりしていますけれど、かわいいビジュアルのグリーンに囲まれて、きっときっとファンが多いにちがいありません。その後ホテルまで送り届けてくださってツアーは終わり、楽しいドライブの一日となりました。

窓が開くと蝶々

レストランから眺めるモンセラット山

・・・・・

コロニアル グエルにて

2月3日(金)朝7時20分、ホテル前からピックアップしてくれたのは、バルセロナ在住のカミムラさん。Tさんのお知り合いが数年前に姉妹でスペインを旅されたとき、「バルセロナでガイドをしてもらった」というお話を聞き、私たちもお願いすることにして、以後Tさんが連絡を取り合ってくれていました。
モンセラット・コロニアルグエル・おススメランチのコースで夕刻までをチョイスして、この日を楽しみにしていたのです。初対面のカミムラ氏は気さくな方で、「京田辺市出身」というご挨拶からいっそう親しみを感じてしまいます。
モンセラット(ノコギリ)山まで約40分のドライブ中、20代のはじめから中南米や諸外国を旅されて二度の離婚を経て、25年前からバルセロナに在住し、ここで出会った日本の方と結婚されて現在に至るという、ドラマチックな人生経験もうかがいました。しかし一番ビックリしたのは「子どものころ母に編みものを教えてもらって編んでいた」そうですが、教えてくれたお母さんから「男の子がするもんでない」と言われてしまいました。Tさんと私が編みものをすることからのお話でしたが、今回来年のカレンダー用に作品の撮影をするのがこの旅の目的のひとつですから、重い一眼レフカメラをかついで町なかを歩くエネルギーはなく、この日を撮影の日と決めていました。車にカメラと作品を積み込ませていただければ助かります。そこで事前に「撮影タイム」のお願いもしていたので、おみやげのひとつに私のニット本「ラブリーニット デザイン50」もお渡ししました。どのような写真を撮るのかを知っていただきたかったからです。

ホテルでひと休みして今夜はピンチョス!とメトロに乗って最初の日に出かけた「パラレル」駅へ。モンジュイックの丘へ行ったときと同じですね。そういえば「バルセロナオリンピック」で有森裕子さんが2位となった女子マラソン、あのモンジュイックの丘であったとは・・・。カーブしながら急こう配を駆け上がったのですから「自分をほめてあげたい」という言葉は「全くですね」と言ってあげたい。
さて丘の麓にある街の裏道は「ピンチョス通り」。ピンチョスとは、うすくスライスしたバゲットの上に何層にも食材を積み上げ、ようじで刺すというスタイルのお酒のおつまみ。おばあさんの笑顔につられて入った一軒目では二種類ほどいただき、ちょっとバゲット(美味しいけれど)が厚切りなので他のお店を試してみようとはしご酒。二軒目は若い感覚でしゃれていて、バゲットも薄切り。デザート風もあって大満足でした。

その夜、ふたりともベッドにはいり本を読んでいるとTさんのケイタイに着信。カミムラ氏から思いがけないメッセージが届きました。Tさんが読みあげてくれます。「今日はお疲れさまでした。今仕事を終えて、いただいたニットの本を読みました。とても感動しています。お礼に明日の朝、いつもは山を走るのですが、かわりに海岸で日の出を見ませんか。そのあと地元の漁師さんがやっているバルで朝食をご馳走したいと思います。ご都合はいかがでしょう?」、ですって、「やったア!!信じられない」。
折かえし承諾のメールを送ってもらい、ふたりで喜び合いました。思いがけないことってあるのですね。
翌朝、フロントでクロワッサンの取り置きをちゃっかり頼んでおいて、むかえに来てくれたカミムラ氏とメトロで海岸ちかくまで乗り、浜辺までウォーキング。街はまだ眠っています。浜辺に出るとピンクに染まってる!誘っていただかなければ見ることのなかったバルセロナです。漁師めしのバルも最高!おまけのツアータイムに大感謝。
ふたたびメトロに乗って途中でカミムラ氏とお別れし、そのままカサ・ビセンスを見学しに街の東北へ向かいます。ガウディの手がけた富裕なビセンス氏の邸宅は幾何学的な外観と内部の各所に細かな工夫が見られて見残しせずにすみました。でも4泊ではサラッとバルセロナ。奥深い街の探索に再訪することができるでしょうか。
ドバイ周りだからこそ半日も自由に過ごせて幸いでした。でなければ早朝の浜辺の散歩など無理なこと。出発前には考えてもいなかったガイドさんとの出会いに、旅の醍醐味を強く実感することができました。

たった四泊のバルセロナでしたが、ガウディの時代の建物が戦争などで破壊もされずに遺されていることに驚きました。どの建築物も細かい作業が積み重ねられていく美しさに感動するばかり。気候にもよるのでしょう、人々のフレンドリーさも居心地が良かったです。
とにかくカミムラ氏との出会いが圧巻でした。私が撮影する様子を見ていて、自分も頑張らねばと思われたこと、近くだったら編みものを習いたいと言ってくださったこと、ここ数年は歳を感ずる日々ですが、いずれのお言葉からもパワーをいただきました。旅はエネルギーの源と信じています。そのような思い以上の旅となり喜んでいるところです。
今回、旅のブログを開始する際、カミムラ氏に色々書かせていただくことについての承諾を得たくメールでうかがいましたら、「どんどんなんでも書いて宣伝してください」と快諾!
スペインに旅することをお考えの方は、「バルセロナ カミムラ」または「バルセロナ コケモン」で検索をどうぞ。サッカーのチケットなども取り扱っているみたいです。

またこの旅を充実したものにしてくれた同行のタカガキさんにも心からのお礼を!「サグラダファミリア・カタルーニャ音楽堂。グエル公園」などのチケットをネットでゲットしてくださり、私自身MAPを広げる必要もなく、どれほど軽やかに街を歩けたことかと感謝してもしきれません。

4回に分けて長くなりました。そろそろ桜も開花します。どうぞ佳き春をお過ごしください。

asako  2023・3・16

カミムラ氏とコケモン店内

葡萄畑に囲まれたレストラン CAL BLAYのランチ

グエル邸の礼拝堂

まずはモンセラットに到着。朝一番、空いている始発の登山電車に乗せたかったようです。この日は観光客の姿がなく、二両のうち一両目は三人のみの貸し切りでした。きっと繁忙期は観光バスも駐車場をうめて、電車も満員にちかいための配慮だったにちがいありません。
標高を上げ20分で終点到着。澄んだ山の空気を胸いっぱいに取り入れて、さあ階段をのぼり教会へ。この山中のどこかで発見されたという「黒マリア像」をご神体とした聖地なのですね。午後には併設される学校の少年合唱団によるコンサートも開かれるけど、午前の静寂につつまれた礼拝堂などを巡ったあと、外に出て見晴らしのよい展望台に向かいます。麓の村が霞むほどの雲海!
ぐるりと回れば左手に遠くフランスとの国境である、まだ雪をのせたピレネー山脈も望めます。モンセラットはガウディのふるさとであることから、ニョキニョキしたとんがり帽子の形が「サグラダファミリア」の原型と言われていますが、カミムラ氏によれば、「ガウディは何も文書を遺していないので、すべて後づけ説がある」とのこと。ふるさとの人々が聖地の山を、巨匠がイメージしたと思いたい気持ちは分かりますが真実は?
さて7時20分の待ち合わせの早さから「朝食はいかがしたものですか」との問い合わせに、「モンセラットでチーズの試食があるし・・・」との回答に?の二人でしたが、確かに散歩をしている間にミモザが満開に咲いている教会脇にテントが並びだし、地元の産物を売っています。その中のひとつのチーズ屋さんの屋台がオススメのようで立ち寄ります。
幼いころウクライナから家族で移住してきたというニコさんのお店です。笑顔であれこれチーズの塊を削り取ってくれるので、「美味しい!」と言いながら試食タイムを堪能していると、カップに入ったカッテージチーズのふたを開けて持たせ、そこにこれも自家製というハチミツをトローリと掛けてくれます。完食してさすがに朝食替わりですね。実はそれでも心配で、ふたりは早起きして前夜コンビニで仕入れておいた軽食はすませておいたので、あわせて丁度良いモーニングとなり、もちろんチーズも買いました。
さて登山電車が着くと観光客もゾロゾロやって来ます。入れ違いに下りて麓駅へ。そして30分ほど走ってコロニアルグエル(グエル村)に向かいます。

旧式の登山電車とモンセラット山

漁師めしのバル

朝から賑わう

黒マリア像のある礼拝堂

昔の駅舎

ビセンス邸近くの魚屋さん。住宅街にあって
電気の傘にレースが被せられているのがお洒落!

カサ・ビセンス
ガウデイ初期の設計

美しいカーブの椅子に
ステンドグラスの光が降り注ぐ

モンセラット山からの雲海

手前が修道院、奥が教会

   photo takagaki

ビジュアルも楽しいピンチョス

8時前の海岸

海岸のサンドアート 日本人作?