つかのまの春

予報では暖冬と言われていた冬が終わるころ、まるで真冬のような寒さとなりました。気温の乱高下に体力がついていけない方も多かったようです。桜の開花も早めと思っていたら、寒風に首をすくめてしまったのでしょうか昨年はもう咲いていたのに咲く気配も感じられない3月末のことです。
27日夕刻から川端荒神口近くにある「ゲーテインスイテイチュート・ヴィラ鴨川(元ドイツ文化センター)」にてあるレセプションがありました。昨秋「姉妹都市締結60周年記念事業」に参加して出かけたドイツ・ケルン市から、レーカー市長さんご一行をお迎えしての集いです。19時半開催の前にタペストリー「ケルン」を持参して展示準備のため18時に出向きます。注文しておいた「貼れパネ」を業者さんから受け取り、会館の舞台装置係りさんと組み立て、タペストリーを貼りピクチャーレールに吊るして完成!お客さまたちも続々ご来場です。ケルンへの旅をご一緒させていただいた「京都国際交流合唱団」のメンバーとも再会!
京都市長に就任されたばかりの松井市長さんと、ケルンでお会いしたレーカー市長さんのご挨拶のあとテーブルの方々と乾杯などしてくつろいでいると突然、京都市総合企画局・国際交流室の方から呼ばれて、タペストリーの作者として紹介されるとのこと。聞いていないけど・・・、ただ無言でご挨拶だけではと、マイクをお借りすることを願い出ました。
京都との姉妹都市である九つの美しい古都を、2004年よりタペストリーとして制作することをライフワークとしたことや、昨年ケルンへ伺った折に、レーカー市長さんから『三月に京都でお会いしましょう』と言われたので、今日の日を楽しみにしていました」と申し上げ「WELCOME TO KYOTO」と申し上げると、ステージ上のレーカー市長さんは笑顔で手を降り拍手してくださいました。もちろん通訳さんがいらしてのことですが、初めは慣れずにフレーズが長すぎて通訳さんを困らせたようです。しかしその後は見知らぬ来場者の皆さんからも「素晴らしいですね、写真を撮っていいですか?」などの反響もあり、レーカー市長さん、松井市長さんとも写真に収まれて感激しました。
お二人へはそれぞれメッセージ用にお便りと拙書『わが心のタペストリー』や「ケルン」のクリアファイルなどを手渡すことができました。松井市長さんへは高校三年のとき東京から修学旅行に来て「松井旅館」に泊まったのですよ(そこのご子息)」と申し上げ、昨秋刊行の『京都、わが心のオアシス』を差し上げると、「ほんと!」と言って喜ばれ、お名刺にアドレスなどを書いてくださいました。とっても気さくで素敵な市長さんです。レーカー市長さんには、この冬編んでいたツートンカラーのマフラーもプレゼント。目を見張り「色がきれい!」と喜んでくださり、ケルンでのレセプションでお会いしたからこその嬉しい再会となりました。世界中が姉妹都市であればと願う私の気もちが通じてくれれば幸いです。

アンジュ オープンアトリエ
雪柳が咲きはじめて・・・

ケルンのレーカー市長さんと
京都の松井市長さんにはさまれて

3日(水)はパリから来日している里美さんの友人カップルをご案内。10時に宿泊されている岡崎の宿へ、山科在住Tさんの車でピックアップに向かいます。Tさんとは昨年一月にバルセロナまでご一緒しました。この日は心強い通訳さんでもあります。初対面のジョルジュさんとミリアムさんは待ちかねていてくれて、ミステリーツアーのような一日を楽しみにされていたようです。
平安神宮の前を通り、少し回り道をしながら、寺町二条のボタンのお店「エクラン」へ。通りがかりですがウインドーニットの入れ替えをさせていただきます。興味津々のミリアムさんも付いてきて、飾っていた作品と新しい作品の写真を撮られました。
さあ出発!目当ては京北にある八百一さんのレストランですが、途中車窓から観光もしながらの気まぐれドライブです。丸太町通りから上七軒の風情ある石畳の細道を通り抜けていると「祇園みたい!」。東京で一週間を過ごし、京都も5日目ですから祇園へも行かれたのですね。次の日に行く予定という金閣寺前を通り、「きぬかけの道」と呼ばれる静かな竜安寺・仁和寺前を抜けて福王子からいよいよ山道。栂尾・高尾を経て杉林をくねくねと曲がっていると「ファンタスチック!」との感想。この日は小雨模様でしたから、杉の三角錐が下りてきた雲を借景にまるで墨絵の美しさ。晴れマークのない一日を危惧していましたが、晴れた日には見ることのできない光景ですから、かえって良かったのかもしれません。
12時前にレストラン・クモイ着。事前に予約していましたが、この日は他に訪れる人も無く、まるで貸し切り状態。静かで美味しく美しいランチをお二人は喜んでくださいました。ブラインドの下りていたいちごファームの見学もさせていただき、日本の甘いいちごの栽培法も理解していただきました。帰る途中、前日にTVで紹介されていた高尾の「平岡八幡宮」に寄り、江戸時代に描かれた花の格天井を見学。以前にも来たことがあるけれど、前よりいっそう退色した花の絵がはかなげでした。雨が上がってはいますが、境内の桜や椿も市内の観光名所のような華やかさとは無縁、山里らしい春でした。
夕暮れの市内へ戻り、ジョルジュさんのお孫さんたちへのお土産にしたいという着物を見に行ったり、お茶をご馳走したいと言われるのでパーキングのできるホテルへ行ったり、最後に岡崎のホテルまでお送りすると、とても喜んでくださいました。帰宅して間もなく里美さんから電話、「ジョルジュがとっても特別な一日だった。お礼を言ってほしいですって」とのこと。 

最初に「京都に行く友人がいるのだけど・・・」と電話されてきたとき、「ちょっといそがしい期間だけど、あなたの友人は私の友人」と言って、一日限りのご案内を受けて良かったです。京都のあとは大阪へ行くお二人。奈良や有馬温泉などもアドバイスしておいたので、まだあちこち楽しんでいることでしょう。
5日は東京のレッスンで上京。週末は春へのアトリエ衣替え。年々、大きなもの重たいものの移動には休み休みで時間がかかるようになりました。45年ですから糸の入れ替えは春と秋の年2回とし90回目?大変ですが季節を先取する仕事で嫌いではありません。今回も思いがけない配置換えをすることで雰囲気に変化を持たせることができました。決められた空間を生かせるマジックのようで、気づかれる方は少ないかも知れないけれど、模様替えの醍醐味でもあるのです。
さあ新学期!アンジュのレッスンクラスも気分新たにスタートです。
気候不順の折、どうぞご自愛ください。

asako 2024・4・11

しだれ桜の下から曇り空を見上げる

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4月11日 アンジュにて 藤も日々成長!

4月7日(日) 山科・岩屋寺

赤い毛氈に置かれた朝採り椿

平岡八幡宮にて

八百一レストラン 郷蔵前 クモイにて

さて、ご案内させていただいていた「45周年記念のオープンアトリエ」も3月29日から31日まで開催。号外として15年ぶりに発行・発送した「アンジュ便り」は長年のアンジュの仲間たちにも届いて、たくさんの方々から反響がありました。思いがけない郵便物に「もう泣きそう」・「涙が出ました」など感想も届いたので思い切って描いてみて良かったとしみじみ思ったことです。
初日の一番のお客さまは、もちろんいつの催しでも一番に来てくれる山科在住Kさん。アンジュが出来たころからの何でも一番乗りさん。気まぐれレッスン時代からアカデミーになってもずっと通い続けてくれていて、もう立派な大学院生?Kさんの居ないアンジュは考えられないほどです。一番だからこそ「あァやっぱり」と思うようなとっておきの品々を抱えて嬉しそう。その後来られた見ず知らず方々とも楽しそうに歓談され、最終日にもまた来てくれて刺繍作家の故森麗子さんの額絵も大小持ち帰ってくださいました。
今回は長年収集してきた器類をテーブルに並べてのマルシェでしたが、大方無くなり食器棚も閑散として少し身軽になりました。
アプローチの奥まったところに置いた看板に目を留めて、通りがかりに入って来られた方も数人。以前から気になっていたお宅です!と興奮気味にあれこれ雑貨を買ってくださいました。
久しぶりのアトリエオープンでしたが、三日間だけのお店やさんごっこのようで、たまにはいいものだと実感した次第です。翌4月1日は後片付けと発送に追われ2日はアシスタントと冬糸・夏糸の入れ替え。